労働問題・債務整理・家庭問題・その他、大阪の法律相談なら関西合同法律事務所へお任せください。

【判例紹介】財産開示手続実施決定に対する執行抗告

2022-12-01

財産開示手続の実施決定に対する執行抗告に関する最高裁判例(令和4年10月6日最高裁決定)を紹介します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・弁護士 井上直行

【令和3年(許)16号 財産開示手続実施決定に対する執行抗告審の取消決定に対する許可抗告事件 令和4年10月6日最高裁判所第一小法廷決定 民事執行法197条1項2号に該当する事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告において請求債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることの許否 破棄差戻】

① 「財産開示手続」

財産開示手続は,権利実現の実効性を確保する見地から,債権者が債務者の財産に関する情報を取得するための手続であり,債務者(開示義務者)が財産開示期日に裁判所に出頭し,債務者の財産状況を陳述する手続となります。

民事執行法の改正で制度が強化されました(令和2年4月1日施行)。債務者不出頭等の場合の罰則が「過料」から「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」へ強化されました。債権者として申立てができる人の範囲が拡大し、公正証書で養育費を定めていた場合も財産開示手続が利用できるようになりました。そのため、財産開示手続の申立てが増加傾向にあります。

② 本件は、
AさんとBさんは、平成28年12月、公正証書により、Bさんが支払義務を負う両者の間の子の監護費用に関する合意をし、離婚しました。Aさんは、令和3年2月、公正証書について執行文の付与を受け、公正証書及び執行文の謄本がBさんに送達されました。(しかしながら、①強制執行の手続きで一部の弁済しか得られなかったか、②把握している債務者の財産に対する強制執行をしても一部の弁済しか得られない事情があったか、いずれか強制執行が実を結ばない理由がありました。)   そこで、Aさんは、令和3年6月、公正証書に表示された子の監護費用に係る確定期限の定めのある金銭債権を請求債権として、財産開示手続の申立てをしました。
第1審裁判所は、令和3年7月、本件申立ては法197条1項2号に該当する事由があるとして、Bさんについて、財産開示手続の実施決定(原々決定)をしました。その後、Bさんは、原々決定に対し、東京高裁に執行抗告をした上で、Aさんに対し、請求債権のうち確定期限が到来しているものについて弁済をしました。東京高裁は、本件債権は弁済により消滅したとし、原々決定を取り消し、財産開示手続の申立てを却下しました。

③ 最高裁の決定

最高裁は、「法197条1項2号に該当する事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告においては、請求債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることはできないと解するのが相当である。」と判示し、原決定を破棄し、東京高裁に差し戻しました。

東京高裁は、「後からでも未払いの養育費を払ったのなら、執行抗告でその事実を考慮して、もう財産開示手続をしなくてよい」という判断をしたのですが、最高裁は、「後から未払いの養育費を払ったからと言って、その事実を財産開示手続の執行抗告では考慮すべきではない。」と東京高裁の判断は誤りだと判じたのです。最高裁によれば、後から未払いを払ったのなら、その事実をもって、まず請求異議の訴え又は請求異議の訴えに係る執行停止の裁判をする必要があるということになります。

債務者が執るべき手続きの問題ですが、債権者にとっては財産開示手続の申立は、実際的な効果が高そうと言えそうです。

 

 

カテゴリー: 民事 

アクセス

地図

大阪市北区西天満4丁目4番13号 三共ビル梅新5階

地下鉄/谷町線・堺筋線 南森町駅
2号出口から 徒歩 約10分

icon詳しくはこちら

弁護士紹介