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【再転相続】相続放棄の熟慮期間はいつからカウントするか

2022-03-25

再転相続の相続放棄の熟慮期間はいつからカウントするか

弁護士 松本 七哉

 むつかしい相続の相談がありました。お父さんが亡くなり、子どもさんら(そのうちの一人が相談者)が不動産の相続を含め、遺産分割を完了しました。ところが、お父さんが亡くなる前に、お父さんの妹さんが亡くなっており、その妹さんが借家の家賃を滞納していたとのことで、突然、滞納家賃の支払いを求める訴状が相談者のところに来たのです。

おばさん(お父さんの妹)は、結婚したことがなく、子どもはいませんでした。おばさんの相続人は、子どもがいないので、その親となり、その親も亡くなっているので、その兄弟である、相談者のお父さんになります。理屈の上では、相談者は、そのお父さんの債務を相続したことになります。

プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も相続されます。マイナスの財産(借金や滞納家賃)が相続されるときに、これを免れる制度として、相続放棄という手続きがあることはご存じの方も多いと思います。亡くなられた方の住所を管轄する家庭裁判所に申し立てをします。ただし、相続放棄ができる期間は、原則、亡くなられてから3ケ月と決められています(民法915条)。これを熟慮期間といいます。

しかし、ご相談の件では、お父さんが亡くなられて1年以上、おばさんが亡くなられて2年以上経っていました。

まず第1に、お父さんの遺産を相続した後でも、おばさんの負債の相続放棄ができるかですが、これは肯定されています。お父さんの相続には影響がありません。再転相続の放棄と言われています。

しかし問題は、おばさんの相続放棄の熟慮期間はどのようにカウントされるかです。おばさんの死亡からであれば2年が経過しています。お父さんの死亡からみても1年経過しています。そこからであれば、完全にアウトですね。しかし、判例や実務は、放棄すべき事情を知ったときから3ケ月と解釈しています。本件では、滞納家賃の訴状が届いた時から3ケ月と考えるべきです。

同様の事案で、同じような解釈をした判決があります(最高裁判所令和元年8月9日判決 民集第73巻3号293頁 裁判要旨:民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が,当該死亡した者からの相続により,当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を,自己が承継した事実を知った時をいう。)。

カテゴリー: 家事 

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