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枚方生活保護裁判

2010-06-01

枚方生活保護裁判

 弁護士喜田崇之

 

平成22年2月23日、枚方市で生活保護の申請を却下された佐藤キヨ子さんという70歳の女性が原告となり、国に対して処分の取消と、損害賠償を求めて訴えを提起しました。この事件をご報告します。

 

1、 事件の概要

佐藤さんは、生まれつき股関節に障害を持ち、激痛が走るため長時間歩くことができませんでした。また、ちょっとした坂道があるだけでも、バランスを崩してこけてしまうのでした。

佐藤さんは、結婚して息子を生みました。その息子さんが小学校6年生のとき、卒業文集「『母の日』に考える」という題で次のような作文を書きました。

「お母さんは,いつまでもいつまでも生きていてほしい。」「今,こんなお母さんに,ぼくがしてあげられることは,何だろうと考えた。」「それは,お母さんが,一番ほしい物は,たぶん自動車・・・がほしいのだと思う。」「ぼくが,大きくなって買ってあげられるまで,まっていてほしい。」

これを読んだ佐藤さんは感激し、1年以上かけて自動車教習所に通い免許を取り、車の運転の練習をしました。そして、息子さんは、社会人になってついに念願の車を佐藤さんにプレゼントしたのでした。

以後、佐藤さんの生活は変わりました。毎日買い物へ行ったり、友人の家に行ったり、病院へ行ったりすることができるようになり、佐藤さんの世界は一気に広がり、性格もすごく明るくなりました。佐藤さんは今までにない充実した日々を過ごしていました。

ところが、平成18年6月、夫が大腸がんで亡くなり、佐藤さんは2カ月で約10万円の年金収入しかなくなりました。貯蓄が底をついたため、佐藤さんは枚方市に生活保護の申請をしました。

枚方市は、佐藤さんに車を処分するように強く指導しました。そして、一度は保護の受給を認めたのですが、佐藤さんが車を処分しないことを理由に、保護を打ち切りにする保護廃止決定を下しました。佐藤さんは再び申請をしましたが、それも却下されました。

佐藤さんの車には、財産的価値はありません。財産価値のない車を保有することがどうしていけないのでしょうか。

 

2、佐藤さんにとっての車の意義

股関節に障害を持ち、自由に歩くことのできない佐藤さんにとって、車は単なる移動手段というだけではありません。佐藤さんは、車を手にしたことにより、いろいろな方との交流を深めることができ、人格形成にとっても非常に重要な影響を与えました。障害を持つ佐藤さんが、これら人として当たり前のあるべき社会参加をするためには、どうしても車が必要なのです。

この裁判では、障害を持つ佐藤さんにとっての車の持つ重要な意義を、裁判所に訴えていきたいと思っています。そして、同じような境遇に置かれている方にとっても助けになるように、必ず成果を上げたいと思っています。

カテゴリー: くらし, 行政 

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