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[平和]に関する記事

戦争のリアルと平和憲法を生きていく事

2023-10-31

戦争のリアルと平和憲法を生きていく事

                              弁護士 上山勤

1、私の考えた平和

平和が大切!と本当に感じる為に、『戦争』の本当の姿を知る必要がある。
戦争になると、命が喪われる。職業軍人だけでなく普通の市民の命が喪われる。あたりまえの生活が壊される。戦争のリアルがそれを教えてくれる。今ウクライナでは戦争が起きている。そこには、現代の戦争のリアルがある。

2、 ウクライナは、国土面積は日本の1.6倍。人口は4159万人。2022年2月、突然のロシア侵攻。ゼレンスキー大統領は、ロシア侵攻の翌日、18歳~60歳の男性の出国を禁止する大統領令を発布。しかし50万円以上の賄賂を積めば、徴兵逃れが可能という。大統領は2023年8月半ば、国内各地の徴兵担当者を全員解任した。収賄や脅迫が横行しているというのが、その理由だった。徴兵担当者は、制服の色から「オリーブ」と呼ばれている。2023年10月からは、医師・薬剤師などについては女性も徴兵の対象となった。

3、戦争のリアル・・・以下は22/3と23/8の国連のreportによる。
1) 人が殺されるということ
イ) 戦場におけるウクライナ・ロシア両国の兵士の死亡は、2023年8月の時点でおよそ50万人に近づいていると推測されている(ロシア軍が30万人、ウクライナ12万人の犠牲)。
ロ) 民間人の被害 2023年8月11日に発表された国連人権高等弁務官事務所の報告は、民間人の死者は8490人、受傷者は1万4244人。
ハ) Buchaでの殺戮・・・民間人も殺される。具体例。
①IrynaとOleh・・・自宅に手榴弾が投げ込まれ、家の中は火の海に。外に逃げる。銃を構えていたロシア兵がOlehのシャツを脱がせてひざまづかせる。駆け寄って踏みつける。銃撃。Iryanaは彼が耳から血を流しているのを見る。Iryanaは叫ぶ。「shoot me! Com on!」兵士は三度にわたって、彼女に銃を向けたが「自分は女は撃たない」と言って撃たなかった。・・Iryana Abramovaの話
②Buchaはキーフ近郊の街。3000~4000名はすでに避難していた。ロシア兵はこの町で、約400名の市民を殺戮。ロシア兵撤退後、何ヶ月かして四肢をバラバラに切断された死体なども発見された。
③ウクライナ政府は、10名のロシア兵の名前と写真を発表。戦争犯罪、と。

2) 戦争のリアル  突然、家や職場に爆弾やミサイルが飛んでくる。
⇒ そこでは民間人も殺される。受傷する。避難所が必要、地下鉄の駅など。
避難所は男女の別とか、家族の仕切りなどは保証されていない。トイレの問題と食事の問題。
性暴力被害の発生が報告されている。
⇒ 学校がなくなる。授業・教育は校舎の物理的破壊。避難所での授業。ウェブを利用した授業。
仮に破壊されていなくても、サイレンのつど、地下施設への避難行動。機材・教科書の喪失。
子どもたちの学びは中断せざるを得ない。                           ⇒ 職場はなくなる。多くの男性が兵役にとられる中で、社会の役割が変わる。
肉体労働・地下での労働・深夜労働などを女性が担う。性暴力被害の発生。
⇒ 電気・ガス・水道が止まる。アクセスの問題。水はどうする→ 飲料、シャワー、洗濯、トイレ・・・インフラとしての水道管は破壊と修復を何度も繰り返している実情。電気なども同様。修復が間に合わない地域も多く、そこでは、飲料水については給水活動が行われている。東部や南部では、給水活動も間に合わなくて、川まで危険を冒して水汲みに行く。女性が多い。シャワーなどはもう何週間もできていない人が多数。

『ロシア兵が、バフムトにやってきた時、Valentyna’s(73歳)の家のガスは最初にカットされた。次に大砲の砲弾が電気送電設備を破壊した。8月までの間Valentynaと娘のNatalia(52歳)は水を手にすることができなかった。戦闘が激しくなり、約一年間にわたる苛烈な戦闘の結果、ガスと電気はそれぞれ木と石炭に置き換わった。井戸に近づくことすら危険となった時、彼らは大変な危険を冒してバフムト川を越えて隣の街に向け脱出した。』。彼らは、8000名のバフムト市民の一人である。バフムトは、10月には完全に水の供給ができなくなった。元々、7万人の人口。開戦まではなんとか井戸水から続く運河をキープして水を確保していたが砲弾が運河を破壊した。行政担当者はポンプやタンクの修復を試みたが多量の砲弾がそれを阻止した。飲み水は、もうボランティアの活動に頼るしかない、とバフムトの軍事委員会の長はいう。 Svitlana(38歳)はいう。『私の希望は、シャワーを浴びられること、そして手を洗いたいし、定期的にトイレやバスを使えること』を何ヶ月も待ち続けてきたとも。ボランティアは現地のビルの床下に井戸を掘る努力を続けている。また、建物を改築してシャワーが浴びられるようにしたり、洗濯機を使えるように努力している。二ヶ月以上洗濯ができていない人たちがいる。
電気・ガスは使えない→そんな場所では多くの市民は庭で焚き火をして炊飯・焼き物をして食事を取る。薪が貴重な資源。
⇨ 多くの避難民は、現金の持ち合わせがなく、ATMは使えない。公的な補償しか入手できない。しかし、市民の証明ができない人は補償を受けらずボランティアの給付に頼っている。

3) 戦争のリアル・・違う形の生活破壊
①民間施設であるダムの破壊(ジュネーブ条約 議定書 違反)
2023年6月6日、中央ウクライナのカフホカダムが決壊。周辺の広大な地域に水が流出。多くの住宅地と農地が水につかった。ヨーロッパ最大規模の貯水池は干上がりつつある。4つの運河が貯水池から切り離されている。この地域の運河からの水がウクライナ南部の広大な地域にとって飲料水の水源であった。70万人が断水。科学的な証拠は、ダムが内部からの爆発で破壊されたことを示しており、その大部分をロシア軍が支配していたことから彼らが破壊の原因を作ったと考えられる。今後、広大な経済の破壊と環境の破壊 が予想される。
②原発施設への攻撃の危険
クレムリンが原発施設に敷設した爆薬の引き金を引けば、進行していっていない部隊の人間も破滅的な影響を受けるであろう。ウクライナには15個の原子力発電施設があり、国の約50%のエネルギーを生んでいる。エネルギー施設への攻撃は現代の紛争では通常の攻撃目標であり相手国の戦争継続のエネルギーをそぐ。しかし、原子力施設の場合は施設はものすごい量の放射性物質を持っており、それらが外部へ流出する可能性がある。例えば、空からの爆撃や大砲の砲弾が反応炉を包む建物を破壊したり核原料を安定的に保管するための冷却装置を破壊する可能性がある。

4) 戦争のリアル 避難・家族はバラバラになる   そ の 実 態
①  国内避難
イ)  2022年の侵攻前、ウクライナにはすでに290万人の人道支援を必要とする人たちがいた。東部の紛争が理由。侵攻後  激しい爆撃により、人道支援の回廊は限定され、食糧や水・医薬品などの基礎的な物へのアクセスも絶望的になった。国内避難民の数は侵攻から一ヶ月で650万人となった。男性は移動ができなかったので避難民の90%は女性と子どもである。急拵えで作られた避難所は混み合っており、ベッドとかマットレス・毛布といった基本的な装備が欠けていた。性別による空間の区分とか家族を単位として区分をするにはスペースが不足していたので、リスクを避けるための防備ができておらず性暴力の危険は増加した。
ロ)   危機の当初、ウクライナには3ヶ月以内に出産をするであろう妊婦が8万人いた。避難所(ショルター)へのアクセスに困難が伴うことと、避難所での安全も不十分なものがある。プライベートの仕切りもなく、多くの市民が雑魚寝の状態である。                        ② 国外避難 避難民の受け入れ国の実情 大きな経済負担など

英国の補償・・350£/月=64400円/月を半年間保障(ウクライナ人のための家賃) 2022年に1335家族がホームレスとして登録されている。2023年には1500~2000家族になり、2023年9月頃には5万所帯を超えるとされている。2023年からは700£/月を一年間と改定。

日本の補償・・出入国在留管理庁が「ウクライナから日本への避難民に対して支援の提供を検討されている地方公共団体及び企業・団体の皆さんへ」というペーパーを発出したのみ。

ポーランドの補償 ・・36000円/月の支援を政府がhostとして補償している。社会保障は8ヶ月。157万人が滞留しており、今ポーランドは息切れ状態。政府によるウクライナ難民支援金はOECD38カ国の中で最大(約1兆2000億円)。

法の支配? 力による現状変更

2023-06-02

法の支配? 力による現状変更                        弁護士  上山  勤

1、2023年5月19日から21日までの3日間、G7の首脳会議が広島で開催された。物々しい警備の状況と首相の言葉がマスコミで紹介されていた。ウクライナに対してロシアが軍事侵攻したことを念頭に許し難い暴挙としてこれを非難している。そして、加盟国に連帯を呼びかけロシアへの軍隊の撤退の呼びかけと経済制裁の強化が訴えられた。

加えて、中国の南方進出や台湾への威嚇の行動を捉えてこれまた、表題のセリフが繰り返された。NHKほかのマスコミも官邸ぶら下がり報道の体質を遺憾なく発揮し、そのままの垂れ流しの紹介にこれ勤めていた。

2、私はテレビでこのセリフを耳にするたびに体調を崩しそうになる。腹が立つのである。素知らぬ顔をして、標記のセリフを繰り返す首相と臆面なくそのまま報道を続けるマスコミ。こんな社会でいいのか

2003年3月、アメリカ合衆国が主体となり、イギリス、オーストラリア、ポーランド等が、イラクが大量破壊兵器を保持していることを理由として、国連軍ではなく、有志連合としてイラクに侵攻し、政権を打倒した。大量のトマホークを打ち込み、劣化ウラン弾でイラクの戦車を圧倒し、20万人を超えるイラク人を殺戮した。これこそ、有無を言わせぬ武力の行使であり、一方的な実力による現状変更であった。この時、日本の首相は何をいったか。「米国の武力行使を理解し、支持いたします」と即座に表明した。法の支配とか、実力による現状変更などというセリフは小泉首相の口からは出なかった。そして、サマーワに自衛隊を派遣する。

イラクで自衛隊は、日本を守るのではない。イラク人を標的とした米軍に加担する行為だから憲法違反だ、として全国で派兵反対の裁判が提起された。大阪でも1500名もの原告が裁判に参加して、自衛隊をイラクに送るな、と訴えた。

3、都合勝手に、言葉を操る人は信頼できない。20年前にも、法の支配とか力による現状変更を認めない、とでもいっておれば信用できるのだが。今、政府は中国が力による台湾侵攻をやりかねない、として米国に同調して沖縄諸島に自衛隊基地を作り、ミサイルの配備に血道を上げている。そして、表題のセリフを繰り返すのである。この地域のミサイルは日本を守るというよりも日本に所在している米軍基地や周辺の軍用艦船に向かって飛来する中国の中距離ミサイルの迎撃が目的である。日本を守るというよりも米軍とその艦船を守ろうというのだ。

どうしてマスコミは、20年前と言うことが違うやないか、と言わないのであろうか。ウクライナについても同様である。いま欧米のメディアの多くが現地取材に基づく独自の報道を続けているが,日本はどうだろう。ロシアやそれに接近する中国との対決姿勢を強める政権幹部の情報に依存しすぎていないか、両国の現実を客観的に伝えることができているのだろうか。

4、イラクに自衛隊が派兵された時、北海道でも裁判が起こされた(自衛隊イラク派兵差止北海道訴訟)。元自由民主党の重鎮であった箕輪登さん(衆議院議員(8期)元防衛政務次官)も原告となった。私は、札幌の裁判所で応援弁論を行い、箕輪登さんの訴えを直接聞く機会があった。箕輪登さんは車椅子に乗り、医師に付き添われながらも法廷で絞り出すような声で、なぜ自由民主党の国防族であった自分が裁判まで起こしたのかを訴えた。『自衛隊は、日本の国を守るためにあるはずです。遠くイラクまで行って何をするんですか。』と。この訴えは、現在も通じる。どうして米国と一緒になって、武力で台湾擁護のため戦う米国と一緒になって、戦争するのですか。なぜ日本の自衛隊員が犠牲になるのですか。どうして沖縄の人たちがまたまた犠牲になるのですか、と。強く思う。政権幹部への期待は持てないが、せめて、批判的な姿勢も見せるマスコミであってほしい。この法廷での訴えの二年後、箕輪登さんは旅立たれた(82歳没)。

                               以  上

【ウクライナからのメッセージ】I don’t want to die !=死にたくない!

2022-07-20

I don’t want to die ! = 死にたくない!   ウクライナからのメッセージ

弁護士 佐々木 正博

「こんな生活は耐えられない。 砲弾が飛んで来ないよう日々祈るのみ。いったい、これは何のためなのか、ただ普通に暮らしていただけなのに…。生活はめちゃくちゃだ。」

これは、2022年7月5日、ウクライナ東部ハルキウ市に住む男子大学生(アントン、18歳)から届いた切実なメッセージです。ロシアによるウクライナ侵攻後、ハルキウ近辺では一時ロシア軍を押し戻していましたが、6月下旬頃からは、砲撃や空襲の警報が昼夜問わず鳴り響いており、事態は悪化しています。

メッセージをくれたアントンは、ハルキウにあるノーベル賞受賞者を複数名輩出したことのある名門大学で歴史を学ぶ学生です。2022年2月24日までは、彼は、毎日勉学に励み、家族やペットのチャーリー(犬)やヴァーシャ(猫)とともに、平凡な暮らしの中で人生を楽しんでいました。

ところが、2月24日、彼の生活は一変します。以下は、彼が寄せてくれたメッセージをもとに、彼の言葉で彼の経験した事実を紹介します。

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私は2月24日のことを昨日のことのように覚えています。思い出すだけでぞっとします。

その日の夕方、私は弟と過ごし、夜は普通に就寝しました。危険な気配はどこにもありませんでした。眠っていると、突然、爆発音が聞こえました。私は、当初、雷が鳴り始めたのか?くらいに思い、気に留めませんでした。しかし、突如、家の壁が揺らぎ始め、これは雷なんかではない、戦争だ、と悟りました。私が両親の部屋に駆け付けると、両親も起き上がっていました。テレビではまだ何も報道されていませんでしたが、インターネット上では、「ウクライナがロシアに攻撃された」とのニュースが出回っていました。

家は揺れ始め、本当に恐ろしかったです。戦争が始まってすぐ、私は家の中の重要書類や食べ物、飲用水などを集め始めました。しかし戦争開始当初は、何も機能しておらず、食べ物も医薬品も手に入りにくい状況でした。

地下シェルターを開けたのは戦争が始まって3日目でした。私たちは、この戦争がすぐに終わると考えていたからです。

3月初めから半ばにかけて、私は1日のうち10時間以上、多い時で14時間もシェルターの中で過ごしました。シェルターにいれば、家が砲撃を受けても生き延びることができます。なので、すぐにシェルターまで走って逃げられるように、夜寝るときも靴を履いたままです。私たちは、今も、このような生活を送っています。ロケット弾は私たちの頭上を飛び交っているのです。

忘れもしない4月11日は最悪の日となりました。この日は、砲撃のほか、上空の爆撃機からの空襲もありました。ロシア軍は私の住むエリアに爆撃を仕掛けてきました。一般市民の住宅が砲撃され、私の隣の家は、完全に破壊され、その付近は砲弾の破片が散乱していました。この時、私が昨年卒業した高校も砲撃を受け、生徒が死亡しました。亡くなったのは、私も知っている子でした。若者だけでなく、年配の方も亡くなりました。

その日、私たち家族は、当面必要なものだけかき集め、安全な場所へ避難しました。安全といっても、自宅からそう離れているわけではありません。森の陰になる場所で、自宅よりいくばくか安全というだけで、今後も砲撃を受ける危険はあります。

いまは、近隣でよく砲撃を受ける地域の方々や動物たちの安全を祈らずにおれませんし、私自身や私の家族が生き残ることができるよう祈るほかありません。この状況は今も続いているのです。

私は3月生まれで、今年の18歳の誕生日は地下シェルターでお祝いしましたが、とても寂しいものでした。食べ物が手に入らない状況で食事を取れない日が続いていましたが、家族は数個のキャンディーで私の成人を祝ってくれました。今日も私たちは、不安と恐怖、そして食糧難の中で暮らしています。

短い夏が終われば冬の足音が聞こえてきます。ウクライナでは、冬期の気温は、摂氏マイナス25度まで冷え込みます。もし、ロシア軍が発電所を攻撃すれば電力も供給されなくなり、私たちは冬に暖を取ることもできなくなります。そうなると、私たちは、上着を着こんで耐え忍ばなければならなくなります。考えただけでも恐怖です。この戦争で辛い思いをするのは、非力な普通の市民なのです。

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彼は、現在、大学の定期試験を終えたところです。大学の講義も試験も全てオンラインになりましたが、空襲警報がひっきりなしに出ているさなかにも、ウクライナの方々は日々生活を送っています。物価が高騰し、配給は滞り、食料や飲料水を買いに行こうにも砲撃を受けて死んでしまう危険と隣り合わせの日々にあります。多くの人々が失業し、収入もないのです。どのようにして生きていけというのでしょう?

女性やこども・老人は、隣国などに避難することも可能です。しかし、18歳から60歳までの男性には、ウクライナから出国する自由すら認められていません。どのようにして生きのびろというのでしょうか。

アントンは、歴史学部の学生です。彼が興味を持って勉強している分野は、ウクライナ通史のほか、日本通史、蒋介石時代の中国史などです。彼は、将来、大学で研究者になることを志望しています。戦争が起こらず、順調にいけば、おそらく、成績優秀な彼は、歴史学者として研究成果を残し、ハルキウ大学で教鞭も取っていたことでしょう。

しかし、アントンの家庭は、両親がこの戦争により失業したことにより、経済的に不安定な状況にあります。それでも、アントンは、近日中に、次年度(9月)からの大学の学費を支払う必要があります。もし、学費を支払えなかった場合は退学となり、最悪の場合、徴兵されます。家族全員が食べるものにも事欠く経済状況の中で、食費と学費のどちらを支払うかを迫られているのです。待っているのは、飢え、もしくは従軍後の命の危険、そのどちらかしかありません。読者の皆さんがアントンの立場に立たされた時、どちらを選びますか…。

アントンから、日本の徴兵事情について質問を受けたので、日本国憲法が戦争を放棄していることを伝え、憲法9条の条文を英訳したものを読んでもらいました。

アントンからは、叶うことなら日本に永住したい…と返事がきました。

憲法9条が私たちに保障してくれているものは、今の私たちの目に見えにくいかもしれません。

しかし、これまでの自分の生活をことごとく破壊され、まさに今この時も、お腹を空かせ、命の危険と隣り合わせで、戦時下に暮らしているアントンには、憲法9条の重みが伝わったようです。

日本に住む我々が軍事支援を行なえないことは、たしかにもどかしく感じられるかもしれません。しかし、私たちが気づいていない憲法9条の価値に、ウクライナのアントンは目を留めてくれているのです。

私たちは、「他国の戦争」という事実には目を向けなくても生きていくことはできます。ただ、「他国の戦争」が「他国の」だけでは終わらない危険もある、憲法が改正された場合、その内容如何によっては、私たち自身が戦時下を生きなくてはならなくなるかもしれないということを再認識する必要があります。

また、今回、アントンとの交流を通じて、困窮している戦地の方々へ、行ないうる範囲での持続可能な支援を行なっていくべきであると思うにいたりました。

アントンとは、毎日、メッセージのやり取りを続けています。一時、丸二日間、音信不通になった際には別れを覚悟しましたが、何とか無事でいることが確認できました。

今後も、アントンからの最新状況を踏まえた続報を発出していきたいと考えています。

以上

 

【声明】ロシア連邦のウクライナ侵略に抗議します

2022-02-25

ロシア連邦のウクライナ侵略に抗議します。

私たち関西合同法律事務所は、プーチン大統領の率いるロシア連邦が開始したウクライナ侵略、核武装による全世界に対する威嚇に強く抗議し、この今世紀最悪の侵略戦争の開始・継続に反対するウクライナの人々、ロシア連邦の人々、全世界の全ての人々と連帯します。

さらに、日本国内で、今回のプーチン大統領の暴挙をもって、「力には力しかない」と短絡的な発想に陥り、日本国憲法9条の改正や日本の更なる軍備増強、核武装の必要性の意見が出てくることを深く憂慮します。

武力による威嚇、武力の行使は、果てしない軍拡をもたらし、悲劇を生みだし、憎悪を呼び覚します。

私たちは、この危機にこそ、日本国憲法の国際平和主義と第9条を改めて確認します。

「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」(日本国憲法前文より)

「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」(日本国憲法9条1項)

2022年2月25日

関西合同法律事務所所員一同

朝鮮人労働者の像を訪ねて

2020-01-05

神戸電鉄朝鮮人労働者の像を訪ねて      弁護士上山勤

2019年11月、神戸市兵庫区にある標記の像を訪問した。JR神戸駅から7番のバスにのって熊の橋で下車。西へ歩いて10分程度のところにある会下山公園の一角にひっそりと立っていた。徴用工問題で日韓の関係がギクシャクしている。気になってネットを覗くと、一年前の画像であったが草ぼうぼうの中に後ろ向きの像があった。当日、足が悪い僕は休みながらやっと現地へ行ったが、きちんと草刈りもされていて、どなたかがペットボトルの水を供えていた。

台座には、神戸電鉄敷設工事朝鮮人労働者の像と刻印されている。上半身裸の労働者がツルハシを振り上げている。台座の裏を見ると、神戸有馬電鉄、三木電鉄敷設工事で下記の13名を追悼するとともに、両民族の永遠の友好と親善を育むために建立した、とあった。13名の氏名と年齢、そしてなくなった場所が書かれている。24歳から47歳までの人たち。逆算すると多くの人が1800年代の生まれ。つまり、韓国が日本に併合される前に生まれた人たちで、少なくとも朝鮮半島の地で皆が育っている。無理やり日本国民とされたにしても、生まれ故郷を遠く離れて異郷の地で不運な死を遂げた人たちの気持ちを考えると無念の思いが察せられ、胸が詰まった。

国民として半島から徴用したのだから、どこの誰を連れてきたのかは記録があるはずなのに、完全な記録は発見されていない。その一部と思われる「厚労省名簿」(朝鮮人労務者に関する調査)が1993年に存在が明らかになり、全容の一部が判明したが、兵庫県だけで13000名を超える名簿のようだ。意識ある方達の努力によって、厚労省の名簿のほかに、直接企業に問い合わせをして記録の提出を求めるなどの調査が続けられている。兵庫県で言えば、軍需工場・港湾労働・土木建設などの仕事に従事していた。ある資料によれば、川崎重工艦船工場などは5685名の労働者の賃金は未払いのままであり、供託もされないまま中に浮いているようだ。内訳は社内預金が506万円超、未払い給与が3338万円超である(現在の貨幣価値だと極めて多額となる)。東京法務局などに供託をした企業も存在する。

安倍政府は請求権協定でもって、個人の請求権も解決済みだと、繰り返している。しかし、果たして個人の権利を他人である国家が放棄できるのか。法律家の目からすれば強い疑問がわく。実体的な請求権を他人が奪うことなどできない。異国の地で亡くなったり、給与や預金の支払いを受けないまま帰国した朝鮮の人たちの気持ちを考える時、このままで良いとは思えない。

繰り返しだが、像の碑文には、恨の文字はない。碑文の精神こそが立派な振る舞いに思える。

2018年は憲法を守るための正念場

2018-01-15

2018年は憲法を守るための正念場

弁護士松本七哉

2017年10月に実施された衆議院の総選挙で、民進党の解党騒ぎもあり、衆議院の議席の八割以上を改憲勢力が占め、憲法改正の発議が現実味を帯びてきました。この総選挙では、自民党が初めて、具体的な改憲内容を公約に掲げました。2019年7月に参議院選挙があり、この選挙で、改憲勢力が3分の2以上を確保できる保障はありませんので、安倍首相は必ずそれまでの間に、改憲の発議をしてくるものと思われます。憲法が生まれて70年以上が経過しましたが、いよいよ、初めて本当に憲法改正の発議が行われ、憲法をめぐる大きなたたかいが迫ってくるのです。
自民党が、この総選挙で掲げた改憲条項は四点ですが、特に九条の改憲と、緊急事態条項には注意をする必要があります。九条に関しては、2017年5月3日の憲法記念日に、安倍首相は、九条一項と二項を残したまま、これに自衛隊を合憲とする条項を加憲するという考えを打ち出しました。「自衛のためであれ戦力は持たないのだ、自衛隊は違憲だ」との考えからは、自衛のための戦力を認めるということは、九条の精神を大きく後退させるものとなります。しかし、九条は、日本の防衛のためにだけの自衛隊は許容しているという考え(これを専守防衛といいます。戦争法ができるまでの日本政府の見解です)からは、このような加憲は、それまでの考え方を確認するだけで、問題がないようにも思えます。
他方で、2015年9月に、戦争法が成立しました。これは、集団的自衛権の名の下に、アメリカが起こす戦争に、自衛隊が参戦する等の内容を含んでいます。明らかに専守防衛の範囲を超えていて、従来の日本政府の考え方からすると違憲となります。この戦争法が成立している以上、安倍首相は、これを合憲と解釈できるような改憲案を提出してくるに決まっています。すなわち、今度、史上初めて提起される憲法改正の発議の内容は、例えば中東でアメリカが起こした戦争に、自衛隊が参戦することを憲法上も容認するように解釈できる条項であると考えられるのです。
この憲法改正は、普通に自衛隊が、世界のどこでもアメリカと一緒になって戦争ができるようにするためのものであると考えられます。
今後1年半、戦後70年で初めて、現実に憲法を改悪するか否かの憲法をめぐる熾烈なたたかいが待ち受けています。憲法を守るたたかいの総決算の年の始まりです。まずは、発議をさせないたたかいをつくる必要があります。

総選挙後の改憲をめぐる情勢とたたかいの展望

2017-11-10
講演会「総選挙後の改憲をめぐる情勢とたたかいの展望」が開かれます

とき:12月13日(水)18:30~
ところ:天満橋・エルおおさか エルシアター
講演:渡辺治(「九条の会」事務局・一橋大学名誉教授)
参加費:1000円(障がい者・介助者・高校生以下は無料)
主催:九条の会・おおさか

9条改憲NO!アベ政治を終わらせよう!11.3おおさか総がかり集会

2017-10-16

9条改憲を許さない!アベ政治を終わらせよう!
―戦争も、核兵器も、辺野古新基地もいらない 11.3おおさか総がかり集会が開催されます

とき:11月3日(金・祝)13:30文化行事14:00府民集会
ところ:中之島公園芝生広場
主催:おおさか総がかり集会実行委員会

 

核兵器禁止条約学習会

2017-10-02

核兵器禁止条約学習会

2017年7月7日、「核兵器の全面廃絶につながる、核兵器を禁止する法的拘束力のある協定について交渉する国連会議」は、核兵器禁止条約を、国連加盟193カ国の63%にあたる122カ国の賛成(保留1、反対1)で採択しました。人類史上初となる核兵器を違法化する条約です。
講演は、この「核兵器禁止条約」について、今後の同条約の広がりと、唯一の被爆国である日本の今後の国際社会での役割についてです。

日時:10月28日(土)14:30~16:30
会場:大阪弁護士会館 12階1203会議室(大阪市北区西天満1-12-5)
講師:大久保 賢一 氏(埼玉県弁護士会 弁護士)
参加費:無料
ウェブからのお申込み http://www.osakaben.or.jp/event/2017/2017_1028.php

主催:大阪弁護士会

 

人権交流集会 『単なる理想か – 憲法の可能性と実現力』

2017-09-07

青法協人権研究交流集会『単なる理想か – 憲法の可能性と実現力』が開催されます

とき:11月25日(土)-26日(日)
ところ:大阪府教育会館「たかつガーデン」(大阪市天王寺区東高津町7番11号)
近鉄 「大阪上本町」駅 徒歩約3分・ 地下鉄「谷町九丁目」駅 徒歩約7分
プログラム:25日(土)13:00~14:00  憲法劇(あすわか兵庫)14:10~16:00分科会1  16:10~18:00 分科会2
26(日)10:00~13:00 シンポジウム(パネリスト 金平茂紀さん・木村草太さん・太田啓子さん・猿田佐世さん)
参加:どなたもご参加いただけます 一般参加券 500円
前売り券お申込みフォーム http://jinkensyukai.com/#contact-form

主催: 青年法律家協会人権研究交流集会 実行委員会

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