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憲法があぶない!

2016-05-01

憲法があぶない

弁護士 正木 みどり

安倍(自民・公明)政権は、2013年12月に秘密保護法案の強行採決、2014年7月に「集団的自衛権の行使容認」の閣議決定、2015年(昨年)9月に日本を「戦争できる国」にする安保関連法(戦争法)案の強行採決と、暴挙をかさねてきました。戦争法は平和と国民の命を危険にさらす憲法違反の法律です。戦争法が今年3月に施行されたため、自衛隊が戦後初めて外国人を殺し、戦死者を出すという危険が現実のものとなっています。「憲法9条のもとでは集団的自衛権は行使できない」という60年余にわたる歴代政府の憲法解釈を、安倍政権は180度変更し、立憲主義を破壊したのです。

 

さらに安倍首相は「憲法を改正していく。自民党は憲法改正草案を決めている」と、明文改憲にまで言及し、参議院選挙で、自民・公明や「おおさか維新」など改憲勢力で3分の2以上の議席をめざすと公言しています。「おおさか維新」の松井代表も「わが党は…憲法改正(の発議)に必要な3分の2の勢力に入る」と発言しています。

他方、日本共産党は、昨年9月の戦争法が強行採決された直後、「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」の提案を行ないました。広範な市民が「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」を結成し、野党共闘を強く求めました。2月には5野党(後に民進党発足により4野党。日本共産党、社会民主党、生活の党)が「安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回」を共通の目標とし、全国的規模で選挙協力を行なって国政選挙にのぞむことになりました。「野党と市民の共闘・共同」です。

日本は、今、権力者による憲法破壊、独裁政治と戦争国家への道を許すのか、それとも、憲法をまもり、戦争法を廃止して立憲主義を取り戻し、平和と民主主義を貫くのか、その岐路に立っているのではないでしょうか。

 

では、自民党が目指す改憲とは何でしょうか。自民党の改憲案を見ると、その危険性がよく判ります。自民党改憲案は、日本国憲法を全面的に変える、としています。そのうちのいくつかを見てましょう。

 

自民党改憲案では、「戦力を持たない」「交戦権を認めない」と定めた9条2項を削除し、「国防軍」を創設します。これまでの政府は、9条2項があるため、自衛隊を「自衛のための必要最小限度の実力組織だから、軍隊ではない」「専守防衛だ」とし、武力行使の目的をもって海外派兵することや、集団的自衛権の行使は、憲法上「許されない」としてきたのです。9条2項の削除と「国防軍」創設で、この歯止めをなくして、自衛隊が何の制約もなく海外で武力行使できるようにしようというのです。改憲案は、軍法会議(軍事裁判所)の創設も定めています。

 

自民党改憲案には「緊急事態条項」が盛り込まれています。熊本大地震の直後、菅官房長官は「緊急時に国家、国民がどのような役割を果たすべきか、憲法に位置づけることは大切な課題だ」と発言しました。東日本大震災被災者に冷たい政治をしておきながら、また原発の再稼働を強引に進めておきながら、震災をだしにしての改憲発言は、本当にひどいと思います。そもそも、自然災害に対応できる法律は既にありますし、さらに必要なら法律を改正するなり作ればよい、財政の手当もすればよいことで、憲法を変える必要は全くありません。衆議院が解散しているという極めてまれな瞬間でも、参議院があって対応できる仕組みは憲法上ちゃんとあります。

自民党改憲案の「緊急事態条項」を見れば、本当のねらいが判ります。総理大臣が(今だと安倍首相ですね)、「これは緊急事態だ」と内閣にかけて宣言すれば(閣議決定すら必要ないのです)、内閣は法律と同じ効力のある政令をつくることができる(つまり、内閣だけで国会を無視して、どんどん決めることができる)、財政の支出もできる、地方自治体に指示もできる、国などが出す「指示」に国民は服従義務がある。国が基本的人権の制限もできる。独裁政治を可能にするものです。「緊急事態条項」というよりも、その本質は「憲法停止条項」です。何が緊急事態なのかも、極めてあいまいで、総理大臣の判断次第になるでしょう。

麻生大臣が、以前「ナチスの手口を学ぶ」と発言しました。まさにナチスは、国家緊急権を発動して、政府が立法権を行使できる授権法を成立させ、民主的なワイマール憲法を骨抜きにして、独裁体制を固め、あの戦争へと走ったのです。

 

自民党改憲案の根本的な問題は、「憲法が憲法でなくなってしまう」ことです。憲法は、一人ひとりの個人の幸せを守るために権力者を縛るものです。いくら国会で多数であろうが、憲法に違反する法律をつくったり、憲法に違反する政治をすることは許されません。「立憲主義」です。安倍政権のこの間の暴挙は、この立憲主義に違反しています。

憲法13条は「すべて国民は、個人として尊重される」とし、幸福追求権を定めています。ところが、自民党改憲案は、この「個人」を「人」に置き換え、「個人の尊重」という考え方をなくしました。また、憲法97条は、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」と定めていますが、自民党改憲案は、これを全部削除しています。基本的人権は「公益及び公の秩序」に反しない範囲でしか認めないとしています。しかも、自民党改憲案では、全国民に憲法尊重義務を負わせており、憲法を、国民の権利・幸せを守るために権力者を縛るものではなく、逆に憲法で国民を縛り、さまざまな義務を負わせるものになっています。これは、近代憲法ではありません。

 

このように、自民党改憲案のごく一部を見ただけでも、改憲勢力が衆議院でも参議院でもそれぞれ3分の2の議席を占めた場合、改憲の発議ができることになりますから、その大変な危険性が判ります。最初は憲法9条からではなく、災害対策に必要などと誤魔化して緊急事態条項(実は憲法停止条項という猛毒)とか、あるいはハードルの低そうなものから改憲を言うかも知れません。でも、動き出したら後戻りができなくなります。安倍政権は、たとえば高市総務大臣が、「政治的不公平」と大臣が判断した放送局は電波を停止できると平気で言う、危険な政権です。報道の自由、表現の自由が失われれば、政府にコントロールされた情報しか国民に知らされなくなってしまいます。

今、そのような日本につき進む道なのか、それとも、平和で一人ひとりの個人の幸せを守る日本国憲法の精神を生かす道なのか、とても大事な局面です。この夏の参議院選挙はとても重要です。

カテゴリー: 平和 

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