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不動信用金庫事件報告

2000-01-01

不動信用金庫事件報告

弁護士 杉島 幸生

(2000年1月1日事務所ニュースより)

金融ビッグバンと庶民金融

金融ビッグバンと言う言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。海外資本に金融市場を開放することになったので日本の金融機関ももっと体力(資本力)をつけて、海外資本に負けないようにしようということです。
しかし、これは体力のない金融機関はいまのうちにつぶれてもらうということにほかなりません。こうした金融ビッグバンの影響で、今、全国で地方銀行や庶民の金融機関といわれた信用組合・信用金庫の再編・破綻処理があいついでいるのです。
これまで信用組合や信用金庫は、大手都市銀行がなかなか資金を提供しようとしない中小零細企業を対象として金融業務を行ってきました。
ところが金融当局は、①2期連続黒字、②一度の支払遅滞もない、③支払条件の変更がないことが国際基準だと称して、この基準にあわない貸付を不良債権に振り分けてきました。この基準だと多くの中小企業への貸付が不良債権と認定されることとなります。その結果、その企業は即座の返済を迫られたり、これからの融資をうち切られたりすることになってしまいます。

弱者切り捨ての金融再編

不動信用金庫も、金融監督庁の突然の査定の結果、債務超過(破綻状態)と認定されました。そして、不動信用金庫は、その破綻処理の方法として「不動信用金庫の各店舗・資産を10分割したうえで府下10の信用金庫が事業譲渡を受ける。しかし、不良債権と不動信用金庫に働く労働者はひとりも承継しない」という異例のスキームを採用したのです。
この背景には、不動信用金庫に存在しているたたかう労働組合(不動信用金庫従業員組合)の組合員を引き継ぐのはいやだという受け皿信金の不当労働行為もありました。
これによって、不動信用金庫に働く労働者169名は全員解雇されました。その結果、受け皿となった各信用金庫は、不良債権(顧客)と労働者は排除しながら、不動信用金庫の資産をまるまる無償で譲り受けることとなったのです。
また、受け皿信金に引き継がれた債権(顧客)についても、事情のわかる不動信用金庫の労働者がひとりも引き継がれないことから、過去の実績やこれまで築いてきた人間関係は評価されません。
ここでは、「人と人、顔の見えるおつきあい」を売り物としてきた地域の庶民金融機関としての信用金庫の役割はまったく省みられていません。結局、金融ビッグバンは、中小零細企業や労働者を切り捨てることで、生き残り信金の経営基盤を強化しようとするものでしかなかったのです。

たちあがった不動信金労働者

不動信用金庫の労働者たちは、このままでは顧客も自分たちも切り捨てられてしまうという怒りからたちあがりました。不動信用金庫と各受け皿信金の間で結ばれた事業譲渡契約は、雇用や労働組合の存在を無視した違法・無効なものであるとして事業譲渡契約の履行手続の停止を求めて大阪地方裁判所に仮処分の申立を行ったのです。
各信用金庫の経営者たちは事業譲渡という形式をとれば、雇用を承継しまいと不良債権を切り捨てようと自分たちの好き勝手にできるのだという主張を繰り返していますが、このような勝手気ままがゆるされていいはずはありません。
この裁判には、「事業譲渡と雇用承継」「採用の自由・契約の自由の限界」といった法律上の難しい論点が含まれています。しかし、このまま、この方式がまかり通るとなれば、使用者は事業譲渡という形式で自由に労働者を解雇できるし、気に入らない顧客を自由に切り捨てることができることになってしまいかねません。
このような使用者の勝手気ままなやり方を、今後、他の分野においても通用させないためにもこの裁判はぜひとも勝たなくてはなりません。
私も不動信用金庫の原告代理人の一人として、このスキームを阻止するために全力を尽くしています。ぜひともご支援・ご協力をお願いします。

カテゴリー: 労働 

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