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INAXメンテナンス中労委勝利命令

2007-11-10

労組法上の労働者性を認める
~INAXメンテナンス事件中労委勝利命令                         弁護士 河村 学

1 はじめに
本件は、INAXメンテナンスから形式的に個人業務委託業者として扱われ、INAX製品の修理業務に従事している労働者ら(CEと呼ばれている。CEとはカスタマー・エンジニアのこと)が、組合に加入し、会社に団体交渉を申し入れたところ、会社がCEが個人事業主であり労組法上の労働者に当たらないとしてその団交申し出を拒否した事件である。
本件は、2004年9月6日にCEの組合加入通知と要求書、団交申入書が提出され、2005年1月27日に、会社の団交拒否が不当労働行為にあたるとして大阪府労働委員会に救済申立がなされた。その後、2006年7月21日に、CEの労働者性を認め、会社の団交拒否を不当労働行為と認定する府労委命令が出された後、会社側が再審査申立をしていた。これに対して、中労委は、2007年10月31日、再審査申立を棄却する命令を出した。

2 CEの就労実態
(1) 会社がCEを採用する手続、会社とCEとの契約等
会社は、CEについて求人広告を出し、これに応募した者に対して面接・筆記試験を行った上でCEとしての採否を決定していた。CEに採用された者は3ヶ月間のアルバイト契約を締結して研修を受け、CE認定制度による資格要件を満たす場合に「業務委託に関する覚書」を締結していた。この覚書はすべてのCEに一律のものであった。

(2) CEの業務内容
CEは、INAX製品の出張修理・点検のほか、製品のリフレッシュサービス、会員契約の仲介等も行っていた。会社の主たる事業である製品の修理・点検等は正社員ではなく、CEによって担われていた。
CEの具体的な業務遂行方法は、会社の定める業務マニュアル等のマニュアルによって詳細に定められていた。このマニュアルには、作業手順・会社への報告方法のほか、CEの心構え・役割、作業用工具・車の整理の仕方、姿勢・あいさつの角度、身だしなみ等まで定められ、その遵守が求められていた。CEは、営業所に出社はしないものの、携帯電話でその日の業務指示を会社から受け、行動予定・行動経過・結果等を携帯電話及びPDAを使って会社に報告していた。業務により得た修理代金は会社にその全額を振り込むよう指示されていた。
CEは、会社が無償貸与する所定の制服を常に着用することを義務づけられ、各CEが所属するサービスセンターの肩書きを付した名刺を配布、所持させていた。顧客を訪問する際には会社の名称を名乗ることとされていた。

(3) CEが業務に従事する時間・場所等
CEの休日は週1日以上で、各CEが翌月分の業務計画を会社に通知することとされていたが、実際には会社が案を作成した後調整を行って決定していた。
会社がCEに業務指示する時間帯は午前8時30分から午後7時までであり、この時間帯はCEは会社からの連絡を受け、業務に従事できる状態にいなければならなかった。
CEは、会社の各サービスセンターに所属し、担当地域としてのエリアを受け持っていた。

(4) CEに対する報酬の決定及び支払
会社ではCEライセンス制度を設け、5ランクに分け、成績によって給料に差が出るシステムを採用していた。
会社は、毎年1回CEの能力・実績・経験などを評価し、ランクの昇格、更新及び降格の判定を行っていた。
CEの給料は毎月1回出来高払いで支払われていた。金額については、会社があらかじめ定めた金額及び計算方法によって支払がなされていた。会社は、支払うべき給料のうちから傷害保険料などを控除してCEに支払をしていた。ただ所得税等の源泉徴収は行っておよず、社会保険・雇用保険にも加入させていなかった。

(5) CEの業務に対する諾否について
府労委の命令では、会社は全国で約570名のCEに対して、ほぼ毎日、CE一人当たり3件から4件の業務依頼を行っており、CEが業務を受託しないことが、多い日で全国で10件程度生じる場合があると認定している。しかしながら、実際には、CEは業務指示を断ることができないし、受託しないような例外的な場合は、業務指示が抵触するため両方の指示を遂行することが不可能な場合(会社が指示を撤回するような場合)に限られているのである。
3 大阪府労委命令
(1) 府労委は、まず、「労働組合法上の労働者とは、使用者との契約の形態やその名称の如何を問わず、雇用契約下にある者と同程度の使用従属関係にある者、又は労働組合法上の保護の必要性が認められる労務供給契約下にある者というべきである」との一般論を述べた。

(2) その上で、府労委は、次のような要素により、本件におけるCEの労働者性を認めた。
①(業務の不可欠性・会社組織への組込) CEは正社員の3倍の約570名であり、かつ、会社の主たる事業はCEによって担われており、会社の事業はCEの存在なしには成り立たない。
②(契約の一律性・一方的決定) 会社とCEとの契約はすべてのCEに関して一律であり、業務従事場所、報酬の算定基礎などCEが従事する際の条件について会社が一方的に決定している。
③(業務の指揮監督) 会社は、CEに対して会社が決定した担当エリア内の業務依頼を行い、また、毎日の報告を義務づけるとともに、業務遂行に関する詳細なマニュアルの遵守を命じているから、CEは、出社こそしていないものの、会社が決定した業務を会社の指揮監督を受けて行っているとみるのが相当である。
また、CEは、業務を行う日の午前8時30分から午後7時までの間は業務依頼の連絡を受けなければならず、また、会社から依頼のあった顧客先に訪問し業務を行わなければならない状況にあるから、会社から依頼された業務以外の業務を行うことは困難であるとみるのが相当である。
④(報酬の労務対価性) CEの報酬は出来高払制ではあるものの、その額は、会社が決めた報酬の算定基礎とCEの経験や業績をもとに会社が判定したCEのランクに基づき決定されているのであって、CEと会社との交渉によりその額が変更される余地はない。他社の業務を行うことが困難であることも考え合わせると、CEが会社から受け取る報酬は、受託した業務の完成に対する対価ではなく、修理業務等の労務に対する対価であるとみるのが相当である。
⑤ 以上のような事実認定から、「CEは、会社が一方的に決定した業務に従事する際の条件の下で会社の指揮監督に従い、会社の事業のためにその労務を提供していると判断でき、会社との関係において労働組合法上の労働者と認めるのが相当である」とした。

4 中労委命令
(1) 中労委命令は、特段一般論を述べることなく、次の5つの要素から、CEの労働者性を認めた。
①(会社組織への組込) CEは、会社の事業遂行に恒常的かつ不可欠な労働力として会社組織に組み込まれていること。具体的には、会社の事業自体CEがいなければ成り立たないこと、会社は顧客との関係においてCE会社従業員として扱ってきたこと、からこの要素を肯定した。
②(契約・業務遂行方法の一方的決定) CEが製品の修理等の業務に従事する際の契約内容は会社が一方的に決定し、業務遂行の具体的方法についても会社が業務マニュアル等で指定する方法によって行うことが義務づけられていること。具体的には、画一的な「覚書」の締結が前提とされ、また、CEライセンス制度により報酬額を一方的に決めるなどにより、会社と個々のCEが個別的に協議交渉して決定ないし変更する余地はなく、かつ想定されていないことを挙げて、この要素を肯定した。
③(業務の指揮監督) CEは、業務遂行の日時、場所、方法等につき会社の指揮監督下に置かれていること。具体的には、午前8時30分から午後7時までの]「委託業務時間帯」は会社がCEを拘束していること、休日の決定は会社が主導的に行っていること、CEが裁量で行うことができるのは顧客への訪問スケジュールの調整程度であり、受注後は会社の指揮監督下に置かれていること、CEの業務遂行は業務マニュアル等会社の指定する方法で行うことが義務づけられていること、担当エリアは会社が決定しておりその範囲で会社はCEの業務場所を拘束していること、CEの業務能力について考課査定を行い、その格付けに応じて報酬の支払額を決定していること、などからこの要素を肯定した。
④(諾否の自由がない・専属的である) CEが会社からの業務依頼を断ることは事実上困難であり、CEは会社との間で強い専属的拘束関係にあること、具体的には、CEが会社からの業務依頼を断るのは、既に別の業務依頼を受けていて対応できない場合にほぼが義等レ手イタこと、会社はCEの
業務遂行状況を理由に担当エリアを削減することがあり、CEは削減を危惧して会社の業務依頼を自由に拒否できなかったこと、などからこの要素を肯定した。
⑤(報酬の労務対価性) CEの受ける報酬はその計算、決定の構造にかんがみ、いわゆる労務対価性が肯認されることが認められる。
これらの点を総合して判断すると、CEは、会社の基本的かつ具体的な指図によって仕事をし、そのために提供した役務につき対価が支払われているといえるのであり、CEは、会社との関係において、労働組合法上の労働者であると判断される」とした。

5 コメント
本件における中労委の命令は、極めて当然の結論である。むしろこのような事件で再審査申立をし、引き延ばしを図った会社の姿勢が問題とされるべきであろう。
本件命令の意義としては、労組法上の労働者性を争う事案について、
①労働者の会社組織への組込(業務の不可欠性)
②労働条件の一方的決定、
③業務の指揮監督
④労働者の専属性(諾否の自由がない)
⑤報酬の労務対価性
の諸点を検討すべきことが、再確認されたことが挙げられる。
ただ、理論的には、労働者概念を個別的労使関係と集団的労使関係で統一的に解すべきか、別異に解すべきかという争いがあり、また、運動的には、「労働者」として扱われてこなかった労働者が、どう組織をつくり、維持していくか、が問われている。「あいまいな雇用関係」が横行している昨今であるから、今後もこの問題を深く追求することが必要である。

カテゴリー: 労働 

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