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労働契約法20 条を活用した運動を‐日本郵便西日本事件大阪地裁判決

2018-03-21

労働契約法20 条を活用した運動を‐日本郵便西日本事件大阪地裁判決  弁護士 河村  学

1 はじめに

労働契約法20条をめぐっては、2013年4月1日の法施行後、いくつかの下級審判決が出されてきたが、うち二つの事件(長澤運輸事件、ハマキョウレックス事件)について、最高裁は、2018年4月20日と23日に弁論を開くと決めている。
早晩、最高裁が本条に関し初判断を行うことになるが、この条項を労働者の運動に役立つものにできるか否かは、むしろ現在及び最高裁判決後の取り組みにかかっているといえる。
本稿で紹介する、日本郵便西日本事件判決(大阪地判平30・2・21。裁判官は内藤裕之、三重野真人、池上裕康。以下「本判決」という)は、裁判所を利用する運動の一つの到達である。

2 事案と判決の内容

本件で問題としたのは、日本郵便の外勤業務に従事する労働者(各戸に郵便配達をしている労働者等)が、正社員か、期間雇用社員かによって、業務内容は全く同じであるにも関わらず、著しい労働条件の格差があるという点である。

問題とした労働条件は多岐にわたるが、大きく分けると、①勤務をしたことに伴う手当(外務業務手当、郵便外務業務精通手当、年末年始勤務手当、早出勤務等手当、祝日給、②夏期・年末手当(賞与)、③福利厚生的手当(住宅手当、扶養手当)、④休暇(夏期・冬期休暇、病気休暇)の各相違である(原告は8名)。

本判決は、比較対象となる正社員を旧一般職と、2016年4月1日から導入された新一般職(限定正社員のようなもの。無期契約であるが、旧一般職と労働条件に格差があり、また、規定上配転の範囲が限定されるなどしている)との「職員群」に分け、それらと期間雇用社員との各種手当等の格差の不合理を問題にし、以下のように、①のうち年末年始勤務手当と、③の住居手当、扶養手当について、格差が不合理であると認めた。

年末年始勤務手当とは、正社員が12月29日から30日までの間に勤務した場合一日4000円、1月1日から3日の間までの間に勤務した場合一日5000円を支給するという手当である(期間雇用社員には支給なし)。本判決は、この手当は繁忙期に業務に従事したことに着目して一律に支給されるものであり、その趣旨は期間雇用社員にも妥当するなどとし、また、個別の集配に関しては、正社員と期間雇用社員に顕著な相違はないとして、旧一般職との比較においても格差は不合理とした。

住居手当とは、正社員の家賃・住宅ローンの負担額に応じて最大2万7000円を支給するという手当である(期間雇用社員には支給なし)。本判決は、この手当の趣旨は主として配転に伴う住宅に係る費用負担の軽減であるところ、転居を伴う配転が予定されていない新一般職にも支給されていることからすると、新一般職との比較においては格差は不合理とした。

扶養手当とは、正社員の扶養親族の状況に応じて、配偶者1万2000円、子一人3100円などを支給する手当である(期間雇用社員には支給なし)。本判決は、この手当の趣旨は労働者・扶養親族の生活保障給という性質を有しており、職務の内容等によりその支給の必要性が大きく左右されるものでないことなどから、旧一般職との比較においても格差は不合理とした。

ほぼ同一の事案につき先行して出されていた日本郵政東日本事件判決(東京地判平29・9・14)よりも格差是正に踏み込んだ判決と評価できる。

3 判決の問題点と今後の取り組み
本判決には、ここには到底書き切れない事実認定上、法解釈上のさまざまな問題があり、はっきり言って、時代に遅れた裁判所の、さらに遅れた判断ではある。
ただ、それでも判決が、結論として、業務関連手当の一つや住宅手当・扶養手当の相違を不合理と認めたこと、その相違の全てを損害と認めたことの意義とその影響は極めて大きい。「非正規」とされる多くの労働者が、何の合理性もない格差に苦しみ、あたかも社会的身分であるかのように格差を当然視されてきたのだから。
最高裁においていかなる判決が出ようとも、均等待遇への道をさらに広げなければならないし、そうした社会に変革しなければならない。(自由法曹団通信2018年3月21日号より)

カテゴリー: 労働 

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