世界社会フォーラムに参加しました  弁護士 上 山  勤


1、2007年1月20日から25日にかけて、アフリカはケニヤの首都ナイロビで開かれた世界社会フォーラム
(略称WSF)に参加しました。海抜1500メートルという高地なので体感温度は高くないのですが赤道の直下だ
けに日差しがとても強い。初日はオープニングセレモニーでしたが、一日で顔と首と手が真っ赤になりました。
フォーラムのスローガンは「抗争・戦争・貧困・環境破壊・過重債務・性差別・不公正貿易」を全体の議題とし
て掲げています。初めてのアフリカでの開催ということもあって、開会式での演説はその多くが不公正貿易の是
正を訴えるものでした。イラク戦争に引き続きソマリヤへの米国の爆撃が行われた直後であったこともあって、
米国のブッシュを名指しで批難するプラカードや横断幕が多くありました。いろんな人の演説があったのですが、
僕が強い印象を受けたのはパレスチナの女性がイスラエルを告発した演説でした。イスラエルによるレバノンへ
の爆撃で頭にきていたせいもありますが、彼女は、「イスラエルはパレスチナ人を令状もなく逮捕・拘束し、そ
のまま裁判にもかけず何年も何年も拘禁を続けている」というのです。まるで、ガンタナモ基地で米国がやって
いることと同じで、パレスチナの人たちの無権利状態が思われて胸が痛みました。

                

2、二日目からは帽子と長袖で武装して、日本国憲法9条のキャンペーンを行いました。ピースボートのブース
に間借りする形で9条の趣旨への賛同署名の訴えをやったのです。全員が9条のロゴマークの入った
Tシャツに
着替えてやったのですが、これがまた西向きで午後の日差しが直接さしこむ苛酷な条件をきっちりと満たした位
置にある。とにかく日差しが強い。日本から持って行った500枚の団扇
(勿論9条のキャンペーンが印刷してあ
)が飛ぶように捌けていく。たくさんの人と会話したが9条の精神を説明し、現在の日本政府はこの憲法を変更
しようとしている、外国へ武器をもって軍隊を送れるようにしようとしているのだ・・・と、つたない英語で説
明をすると
かなりの人が目を丸くする感じで趣旨に賛同して署名に応じてくれました。でも、幾人かは、突っ
込んできました。

その一、それってレジョナルな(日本という地域での)問題でしょ、私達アフリカの人間に関係あるの?と聞
かれる。軍隊の廃棄とはそのための道具(武器)の廃棄も意味しているのだと説明する。そうすると、たとえば
ルワンダの抗争でも大量の武器が外から入ってきて人が殺しあっている、そのことに胸を痛めている現地の人は
強く共感してくれるのです。警察力はいるのではないのか
?と突っ込む人もいたが、それはそのとおりだ。しかし
遠く外国に攻め込めるような航空機とか強力な火器は要らないのだと説明をすると理解してもらえる。

その二、君はそんなこというが、日本はイラクに軍隊を送ってるではないか、と迫る。意識が高くて国際情勢
を良く知っているタイプなのです。イラク訴訟をやっている弁護士としては辛い質問で内心忸怩たる物が残りな
がら、「彼らは攻撃できないのだ。攻撃されたときのみ自分を守るために引き金を引けるのだ。9条があるため
の制約で、日本人は第二次世界大戦以後、外国で人を殺していない。」と説明するのが精一杯でした。でも、現
在の政府が公然と憲法の修正を口にし、外国への武力攻撃も可能な状態を作りだそうとしている、これに反対し
ているのだというと納得して署名をしてくれました。

 ブースでの呼び込みの外に、会場(スタジアム)の周辺をのぼり旗を持って何回も練り歩きました。視線があう
と「ハァーイ」と声をかける。みんな社交的でハァーイと返してくれて話ができます。しかし、こちらも炎天下
の所業。初老の域に差し掛かりつつある僕にはきつかった。とはいうものの、道中、フランス人夫婦に声を掛け
るとなんと80代の御夫婦。とにかく説明をして署名を訴えると、「
What’s army ?」と返ってきました。すま
ん、英語がわからないと。『ガクッ』。

 こちらはフランス語なんてとんとダメ。幸いにも奥様が御主人に説明をして納得してくれました。ありがたや、
ありがたや。しかし、80代で夫婦でナイロビの
WSFに参加するなんて、すごーい、と妙な所に感動しました。


3 国際法律家協会とピースボートの共催でワークショップも開かれました。9条の意義と現下の情勢を訴えた
り、話し合いと交渉で紛争を解決する思想は世界中に拡げられるものだと訴えられました。韓国の大学講師の方
は、9上は第二次世界大戦で多くの犠牲を出した日本がアジアに対して行った誓約なのだと主張。日本が憲法を
変えて武装すればそれに応じてアジアの他国も武装の必要が出てくると訴えました。八十名ぐらいの参加で、意
見交換も活発になされ成功裏におわったセミナーでした。

  当初参加人員は6万人と発表されましたがこれは登録料を支払った人の数らしい。先進国の参加者たる私達は
110
US$、アフリカの人たちは約8US$でした。しかし、ケニヤでは一日働いても収入が1$に届かない労
働者が多くいる。スイスで開かれている金持ち先進国の「世界経済フォーラム」に対抗して開かれているはずの
世界社会フォーラムでそれはないだろ
!ということで大会二日目に会場周辺でデモ行進があったらしい。結局大会
事務局が折れて三日目からは現地の人が無料となったのです。これで二万人ぐらいが追加で参加になりました。
多彩な国からの多くの参加者が共感できるスローガンを叫んでいること、それが僕にとってはとてもよい刺激に
なりました。

 帰国してから、イスラエルによるパレスチナ人の違法な身柄拘束について調べてみました。なんと、イスラ
エルの最高裁判所は、裁判にも掛けないで10年間も身柄拘束を続けている政府の行為を、合法だと判決を出して
いるようです。理由は、人質の交換などの際に有効に使えるのでというのです。許せません。 怒。