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堺市ゼロ票訴訟

2020-03-31

堺市ゼロ票訴訟                                                                                                     弁護士 西口加史仁

堺市在住の有権者が,ある候補者に投票したはずであるのに,その候補者の開票結果が「ゼロ票」とされ,誠実な調査もされないのはおかしいと,堺市に損害賠償を求める訴訟を原告代理人弁護団の一員として提訴しましたので、ご紹介します。

1 事案の概要

原告ら10名は堺市美原区の住民ですが,2019年7月21日執行の第25回参議院議員通常選挙の比例代表選出議員選挙(以下「本件選挙」といいます。)において,堺市美原区内所在の投票所で,山下よしき候補に投票しました。にもかかわらず,本件開票区における山下よしき候補の得票結果が「ゼロ票」とされました。原告らが,本件選挙の開票結果の誤りを指摘して調査を求めたところ,堺市選挙管理委員会の職員は,ミスの可能性を認めながらも,調査できないと回答しました。そこで原告らは,今回のミスの全容解明と、正確な作業実現へ開票作業の見直しを要請しました。これに対し,堺市選挙管理委員会の事務局長は,原告らに対し,「美原区の開票は,開票管理者,開票立会人のもとで正規の手続きを経て確定した結果」だと回答しました。このように,堺市選挙管理委員会は誤りを否認し,謝罪すらもせず,不誠実な対応を見せています。以上の経緯から,原告らは、2020年3月5日、堺市を被告として,慰謝料などを求める訴訟を大阪地裁堺支部に提起しました。

2 誤集計の原因

⑴ 本件開票区における誤集計の原因は,山下よしき候補(日本共産党・当選)に対する投票を,誤って山下ようこ候補(国民民主党・落選)の得票として集計したことにあると推定されます。

ア 山下よしき候補は,大阪府内が最大の地盤であり,過去の選挙結果及び本件選挙における大阪府内全投票所の開票結果からもそれが数字として裏付けられています。にもかかわらず,本件開票区においてのみ,山下よしき候補の得票が0票となっています。かかる開票結果が全くあり得ないものであることは明白であると考えられます。

イ 他方,山下ようこ候補は,国会議員候補者として,地元である東京都立川市に事務所を構え,関東近郊を中心に活動をしています。本件選挙においても,選挙事務所を東京都立川市に置き,専ら東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県及び山梨県内で選挙運動を行い,大阪府内で選挙運動はしていませんでした。にもかかわらず,本件開票区における得票のみが突出して高いものとなっています。このような得票状況となっていることは,あまりにも不自然です。

⑵ また,本件開票区の無効票が344票あることから,山下よしき候補への投票を同候補の得票として計上せず,その分を無効票に計上した疑いもあります。

3 本訴訟の意義

「ゼロ票問題」は各地で起こっています。

選挙事務をめぐるミスが急増しており,この20年余りの間に参院選で11倍近くになったとの報道もあります。報道によれば,ミスや不正の背景として,市区町村職員の大幅な減少に加え,参院選に非拘束名簿式比例代表制が導入され,集計が複雑になったことが指摘されています。そうだとすれば,ゼロ票問題を含む選挙事務のミスは構造的に発生したものであり,本件のゼロ票問題は氷山の一角にすぎないものと考えられます。原告らが堺市美原区での山下よしき候補の得票がゼロであったことに異議を唱え,全容解明と調査を求めても,区の選管はミスの可能性を認めながらも,公職選挙法により,いったん梱包した票は裁判所の決定なしには再開封できないとの回答に終始しました。自らの投票が等しく自ら投票した候補者の得票として計上されることは有権者にとって重要な問題です。本件選挙の投票率は,48.80%と戦後2番目の低さでありましたが,一票の重みを軽視すれば,選挙に対する有権者の信頼がますます失われることとなります。

本訴訟は,原告らの個人的賠償の問題にとどまらず,わが国の民主主義の根幹にかかわる重要な問題であり,本訴訟を通じて,再発防止の体制の構築が求められるところです。

以上

 

カテゴリー: 行政 

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