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[民事]に関する記事

フリーランスに対するハラスメントを違法とする東京地裁判決

2022-08-02

弁護士 清水亮宏

 2022年5月25日、東京地方裁判所は、フリーランスに対するハラスメントを違法とする判決を出しました。

事案は、エステサロンを経営する会社との間で、ウェブサイトの記事執筆等を内容とする業務委託契約を結んだフリーライターの女性が、会社の代表者からセクシュアルハラスメント(打ち合わせ中に性体験を聞かれる、下半身を触られるなど)を受けたとして、会社と代表者に対して、慰謝料などの支払いを求めたというものです。東京地方裁判所は、会社とその代表者に、慰謝料150万円を認め計188万円の支払いを命じました。この判決では、代表者の言動が女性の性的自由を侵害すると指摘するとともに、会社にも安全配慮義務が認められると判断しました。

パワハラやセクハラをはじめとする「ハラスメント」は、会社と雇用契約を結んで働く「労働者」を対象としたものであると考えがちですが、労働者に限定されるわけではありません。近年も、スポーツ業界のハラスメントが度々問題となるなど、広くハラスメントの防止を求める声が高まっています。

フリーランスに関しては、日本俳優連合等が「フリーランス・芸能関係者へのハラスメント実態アンケート」を実施し、厚労省に提出した上で、フリーランスに対するハラスメントの防止を呼びかけるなど、社会的な動きも見られるところでした。

今回の東京地裁判決は、フリーランスに対するハラスメントも違法となり、加害者個人だけでなく、取引関係にある会社も賠償責任を負うことを明確にした点で非常に意義があるものです(会社側が控訴せず、判決が確定したとのことです。)。

取引先等からハラスメントを受けた場合、今回の判決を活用できるかもしれません。また、私たちがハラスメントの加害者にならないように注意することも大切ですね。

悩んでいる方がいらっしゃいましたら、ぜひ当事務所にご相談ください。

【債権法改正】消滅時効の規定が変わりました

2020-09-07

弁護士 高橋早苗

 2020年4月1日から改正された民法が適用されるようになりました。今回の改正された条文は多数ありますが、ここでは消滅時効について説明します。

消滅時効とは、権利を行使しないままでいると一定期間経過後にその権利が消滅してしまうという制度です。これまでは、原則的には権利を行使することができるとき(例えば個人の間でのお金の貸し借りなどの場合は返済期限)から10年とされていましたが、飲食代や宿泊代は1年、弁護士の報酬は2年、医師の診療報酬は3年など職業によって10年より短期の消滅時効が定められているものもありました。また、商行為によって生じた債権は「商事消滅時効」として5年とされていました。

今回の改正では、原則として一律に「権利を行使することができると知った時から5年」、「権利を行使することができる時から10年」とされました。

ただし、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権(債務不履行によるものも不法行為によるものも)の時効期間は原則と異なり、損害および加害者を知った時から「5年」、権利を行使することができる時から「20年」の時効にかかるとされました。生命・身体への侵害はそれ以外に対する侵害よりも重大ですから、時効期間をこれまでの3年から5年へと長期化したのです。これに対し、不法行為によって生命・身体以外の損害を受けた場合(例えば自分の所有物を壊されたなど)の不法行為に基づく損害賠償請求権は、これまでと変わらず、損害及び加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年の時効にかかります。

なお、労働基準法も改正され、2020年4月1日以降に支払日がくる労働者の賃金請求権の消滅時効は,従来の2年から3年に延長されました(労基法115条で5年とされましたが,同法143条2項で当分の間3年とされました。)。

また、今回の改正ではこれまで時効の「中断」と呼ばれていたものを「更新」、「停止」と呼ばれていたものを「完成猶予」と呼び用語をわかりやすくしました。時効の「更新」とは、更新事由があれば時効期間がリセットされ、また一から時効期間が始まるという制度です。これに対し、時効の「完成猶予」とは、時効期間が進行しているものの、猶予の事由が生じている間は、時効の進行が止まり時効が完成しないという制度です。猶予事由が終了すると、引き続き残りの時効期間が進行することになります。当事者間の協議による時効の完成猶予の制度も新設されました。

どのような事由が「更新」や「完成猶予」にあたるか、ご自身の請求権やご自身の抱える債務が時効にかかるかどうかなど、ぜひご相談ください。

司法書士は委任者以外の第三者に対して責任を負うか【判例紹介】

2020-03-13

不動産登記申請の委任を受けた司法書士は、トラブルの際に委任者以外の第三者に対しても、責任を負うか、それはどの程度かに関し、最高裁の判例がありましたので、紹介します。

平成31年(受)6号 損害賠償請求事件 令和2年3月6日  最高裁判所第二小法廷判決  破棄差戻  東京高等裁判所

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/286/089286_hanrei.pdf

事案:東京都内の不動産について,その所有名義人であるAを売主、Bを買主とする売買契約(第1売買契約)、Bを売主、Xを買主とする売買契約(第2売買契約)及びXを売主、Dを買主とする売買契約(第3売買契約)が順次締結され、AからBへの所有権移転登記の申請(前件申請)及びBから中間省略登記の方法によるDへの所有権移転登記の申請(後件申請)が同時にされた。前件申請について地面師が絡んだ不正取引で申請の権限を有しない者による申請であることが判明した後、後件申請は取り下げられた。Xが、後件申請の委任を受けた司法書士であるYに、前件申請がその申請人となるべき者による申請であるか否かの調査をしなかった注意義務違反があると主張して、Yに対し不法行為による損害賠償を求めた事案です。不動産会社Xと司法書士Yとの間には、後件申請について委任契約がありませんから、司法書士は、委任者以外の第三者に対し、責任を負うか問題となりました。

原審は、「司法書士に求められる専門性及び使命にも鑑みると、連件申請により申請される登記のうち後の登記の委任を受けた司法書士は、前の登記の申請の却下事由その他申請のとおりの登記が実現しない相応の可能性を疑わせる事由が明らかになった場合には、前の登記の申請に関する事項も含めて更に調査を行い、登記申請の委任者のみでなく後の登記の実現に重大な利害を有する者に対し、上記事由についての調査結果の説明,当該登記に係る取引の代金決済の中止等の勧告、勧告に応じない場合の辞任の可能性の告知等をすべき注意義務を負っている。」として、第三者であるXに対する責任を認めました。

判示:最高裁は、「司法書士の義務は、委任契約によって定まるものであるから、委任者以外の第三者との関係で同様の判断をすることはできない。」として、委任者に対する責任と第三者に対する責任は異なると示しました。

そのうえで、「司法書士の職務の内容や職責等の公益性と不動産登記制度の目的及び機能に照らすと、登記申請の委任を受けた司法書士は、委任者以外の第三者が当該登記に係る権利の得喪又は移転について重要かつ客観的な利害を有し、このことが当該司法書士に認識可能な場合において、当該第三者が当該司法書士から一定の注意喚起等を受けられるという正当な期待を有しているときは、当該第三者に対しても、上記のような注意喚起を始めとする適切な措置をとるべき義務を負い、これを果たさなければ不法行為法上の責任を問われることがあるというべきである。」と第三者に対する責任がありうると判断ししました。

そして、「これらの義務の存否,あるいはその範囲及び程度を判断するに当たっても、上記に挙げた諸般の事情を考慮することになるが、特に、疑いの程度や、当該第三者の不動産取引に関する知識や経験の程度、当該第三者の利益を保護する他の資格者代理人あるいは不動産仲介業者等の関与の有無及び態様等をも十分に検討し、これら諸般の事情を総合考慮して,当該司法書士の役割の内容や関与の程度等に応じて判断するのが相当である。」と判断基準を示しました。

本件では、Yに第三者に対する司法書士の注意義務違反があるとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして差し戻しました。

最高裁が、登記実務に関する職業的専門家である司法書士が委任者以外の第三者に対しても責任を負いうると認め、判断基準を示したことは大きな影響があります。司法書士以外の各分野の職業専門家についても、影響があります。

 

交通事故に関し労働者から使用者への求償を認めた事例【判例紹介】

2020-03-03

業務中の交通事故による損害賠償に関し、被用者から使用者への求償を認めた事例(最高裁判例)がありましたので、紹介します。

平成30年(受)1429号 債務確認請求本訴・求償金請求反訴事件 令和2年2月28日最高裁判所第二小法廷 判決  破棄差戻 大阪高等裁判所

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/270/089270_hanrei.pdf

事案:X被用者は、Y使用者(貨物運送を業とする資本金300億円以上の株式会社)の従業員で、業務中の交通事故により、Aを死亡させた。Aの相続人は長男と次男であった。次男は、Y使用者に対して損害賠償請求訴訟を提起し、訴訟上の和解が成立し、Y使用者は、次男に対して和解金1300万円を支払った。長男は、X被用者に対して損害賠償請求訴訟を提起し、控訴審で、1383万円余り及び遅延損害金の支払を認める判決があり確定した。X被用者は、長男のために1552万円余りを弁済供託した。X被用者が、長男に弁済(供託)した金額につき、Y使用者に対し、求償金を請求したのが本件です。なお、Y使用者は、その事業に使用する車両全てについて自動車保険契約を締結せず、賠償金を支払うことが必要となった場合に、その都度自己資金によっていた(「自家保険政策」という)。

原審は、「被用者は、第三者の被った損害を賠償したとしても、共同不法行為者間の求償として認められる場合等を除き、使用者に対して求償することはできない」と判断した。

判示:最高裁は、被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加えその損害を賠償した場合には、被用者は、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができる。」として、被用者から使用者に対する求償権を認めました。

「民法715条1項が規定する使用者責任は、使用者が被用者の活動によって利益を上げる関係にあることや、自己の事業範囲を拡張して第三者に損害を生じさせる危険を増大させていることに着目し、損害の公平な分担という見地から、その事業の執行について被用者が第三者に加えた損害を使用者に負担させることとしたものである(最高裁昭和30年(オ)第199号同32年4月30日第三小法廷判決・民集11巻4号646頁、最高裁昭和60年(オ)第1145号同63年7月1日第二小法廷判決・民集42巻6号451頁参照)。このような使用者責任の趣旨からすれば、使用者は、その事業の執行により損害を被った第三者に対する関係において損害賠償義務を負うのみならず、被用者との関係においても、損害の全部又は一部について負担すべき場合があると解すべきである。

また、使用者が第三者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対して求償することができると解すべきところ(最高裁昭和49年(オ)第1073号同51年7月8日第一小法廷判決・民集30巻7号689頁)、上記の場合と被用者が第三者の被った損害を賠償した場合とで、使用者の損害の負担について異なる結果となることは相当でない。

以上によれば、被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え、その損害を賠償した場合には、被用者は、上記諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができるものと解すべきである。」

原審のように、使用者が先に損害賠償したときは被用者に対し求償できるのに、被用者が先に損害賠償したときは使用者に求償できないという解釈は、損害の公平な分担という見地から見ると、おかしいです。被用者からも求償できるというのは損害の公平な分担からいうと当然の解釈というべきです。

 

 

遊具に挟まれた死亡事故で保育園の責任を認めた事例【判例紹介】

2020-02-18

保育園で、3歳児が遊具(うんてい)に首を挟まれ死亡した事故について、設置運営法人の賠償責任を認めた事例(下級審の裁判例)を紹介します。

平成29年(ワ)482 号 損害賠償請求事件 令和2年1月28日 高松地方裁判所判決

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/235/089235_hanrei.pdf

事案:社会福祉法人が設置運営する保育園で、3歳児が、遊具(うんてい)の上向きV字型開口部に頚部が挟まれる事故に遭って死亡したことにつき、園児の両親が、園長、担任保育士、社会福祉法人に対して、損害賠償を請求した事案です。

判示:事故の原因について、「雲梯の西側には、梯子の横木と頬杖により形成された開口角度44.38度の上向きのV字型開口部があり,本件事故は同開口部で発生した。」「国土交通省は、都市公園における遊具の安全確保に関する指針を策定しているところ、同指針及びその解説では、遊具の構造,施工,維持管理の不備などが物的ハザードとして位置付けられ、遊具に関連する事故として挟み込みが挙げられ、その対策として、頭部、指、身体などを挟み込むような開口部、隙間をなくすことやV字開口部が55度ないし60度未満で上向きとならないようにすることなどが参考として挙げられている」「雲梯は、幼児の身体が挟み込まれる危険性を有する遊具である」と判示した。

責任について、園長には、「就任から事故発生までという12日という短い期間内に、雲梯を注意深く観察し、上向きのV字型開口部に園児の身体が挟み込まれることを予見するのは著しく困難であった」と責任を否定し、担任保育士にも、「雲梯は、客観的には幼児の身体が挟み込まれる危険性を有する遊具ではあるものの、これを担任保育士のような個々の保育士においてまで認識することは著しく困難である」として責任を否定した。

社会福祉法人については、「法人ないし以前の園長は、雲梯に上向きのV字型開口部が生じて以降、雲梯が、園児の身体が挟み込まれる危険性を有するものであることを認識し得たといえ、また、認識すべきであった。そうであるにもかかわらず、雲梯の上向きのV字型開口部を解消することなく本件事故まで放置した点につき、社会福祉法人には組織体として過失がある」として、責任を認めた。

安全基準に違反した遊具(うんてい)を、設置して、幼児の利用に供していた以上、社会福祉法人の損害賠償責任が認められるのは当然です。

現場の責任者というべき園長について、「雲梯の形状からすれば、指針や規準を熟知しない者であっても、より注意深く観察すれば、上部の横木と梯子の横板に幼児の身体が入りうることや頬杖と梯子の横板の間に幼児の頭部が挟み込まれることを予見することは不可能とまではいえず、幼児においては、遊具の正しい用法に従わない遊び方をすることもままあること、体力や知力が発達段階にあり、危機回避能力が未熟であることにも照らすと、園長において、より注意深く観察していれば、雲梯の上向きのV字型開口部に園児の身体が挟み込まれることを予見することは可能であった」として、「遊具の危険性についてより注意深く観察すべき立場」を求めたのは参考になるでしょう。

高松地裁判決添付の別紙2を引用

 

介護施設内における転倒事故【判例紹介】

2019-11-22

介護施設内における転倒事故について、下級審の裁判例を紹介します。

さいたま地裁平成30年6月27日判決(判例時報2419号56頁)です

事例は、要介護状態にあった男性(64歳)が、短期入所生活介護サービスで入所中、個室の洗面所で、付添なしでひとりで、口腔ケア(うがい)をしていた最中に転倒し、大腿骨頸部を骨折し、その半年後に誤嚥性肺炎で死亡した。男性の遺族が介護事業所に対し、安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求した事件です。

さいたま地裁判決は、介護事業所の職員が口腔ケア(うがい)に付き添うなどしなかったことが安全配慮義務違反に該当するとし、転倒について責任を認めました。

「男性は、従前から1人で口腔ケア(うがい)を行っており、具体的には、洗面所の壁に左肩をもたれかけるようにしてうがいをしており、被告の職員は、男性が上記のようにうがいをするのを見ていた。ところが、そうすると男性は、壁に左肩をもたれかけて体を支えつつ、蛇口に左手を伸ばして水を汲み、口をゆすぎ、洗面台に水を吐き出すなどの動作をすることになるから、当時の男性の身体能力や洗面所内に支えになる手すりや家具がないことも踏まえれば、被告の職員は、男性がバランスを崩すなどして転倒することを、十分具体的に予見しえたと言うべきである」「したがって、男性の転倒を防ぐ義務を負う被告としては、本件事故の当時、男性の口腔ケア(うがい)に付き添うか洗面所内に椅子を設置するなど、転倒を防止するための措置を講ずる義務を負っていたと認められる。それにもかかわらず、被告は、転倒を防止する措置を何ら講じず、その結果本件事故が発生したのであるから、被告は、本件事故の発生について、債務不履行(安全配慮義務)に基づく損害賠償義務を負うものと認められる」

ただし、誤嚥性肺炎の要因となった認知機能の悪化について、転倒事故と因果関係があることを認めがたいとして、死亡による損害についての賠償までは認めませんでした。

介護施設での転倒事故は少なくないが、下級審裁判所の判決で、細かく認定された事例はそう多くないので、施設での個々の利用者の状況に応じた安全対策について参考になります。

 

 

第2次下請従業員の転落事故と元請の責任【判例紹介】

2019-10-26

第2次下請従業員の転落事故と元請の責任について、下級審の裁判例を紹介します。

東京高裁平成30年4月26日判決(労働判例1206号46頁)です。

事例は、都市再生機構(UR)の団地内における樹木伐採剪定を請け負った第2次下請造園業者の従業員が樹木から転落した労災事故で、従業員が、直接の雇用関係のない元請会社(URの関連会社)と第1次下請業者に対し、安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求した事件です。

東京高裁判決は、第1審判決を覆して、元請会社(URの関連会社)の安全配慮義務違反と第1次下請業者の安全配慮義務違反を認めました。

「元請会社は第1次下請業者に対し、個別の工事に関して安全指示書のやり取りや安全衛生の手引の交付によって、安全帯(一丁掛け)の着用、使用に関する指示を具体的に行い、かつ週2回程度訪れて遵守状況の確認を行っていたものであり、第1次下請業者は、この指示に基づき、第2次下請業者に対し、同様の具体的指示を行っていたものであって、この指示は、第2次下請業者を通じてその従業員に対しても及んでいたことからすれば元請会社と第2次下請業者の従業員との間には、特別な社会的接触の関係を肯定するに足りる指揮監督関係があったということができる。」「本件高所作業においては、安全帯、取り分け二丁掛けの安全帯の着用とその徹底が求められるべきところ、元請会社は、安全帯は一丁掛けのものでも安全確保が十分であるとの誤った認識の下に、一丁掛け安全帯の使用の徹底を指示していたのであるから、安全配慮義務違反がある」

第2次下請業者は、小規模零細企業が多く資力に乏しくて、被災した労働者が損害賠償請求をしても、損害賠償金を支払う能力がないとか、多額の賠償で破産するおそれもあり、損害賠償金を得られない危険が大きいです。そのため 直接の雇用関係にある第2次下請業者の資力に不安があるときには、元請会社や第1次下請業者に対して、損害賠償請求がすることになります。

最高裁判例によれば、安全配慮義務は、特別な社会的接触の関係に入った当事者間において信義則上認められるものとされています。この特別な社会的接触の関係があったか否かについては、下請業者の労働者が元請会社の管理する設備工具などを使っていたか、下請業者の労働者が事実上元請会社の指揮監督を受けて働いていたか、下請業者の労働者の作業内容と元請会社の労働者の作業内容との類似性、といった事情に着目して判断することになります。

東京高裁の判決では、少し緩やかに、特別な社会的接触の関係を肯定しており、労働者によって有利な判断といえます。

 

親による要望と教員への不法行為【判例紹介】

2019-08-11

親による要望と教員への不法行為について、下級審の裁判例を紹介します。

東京地裁平成29年6月26日判決(判例タイムズ1461号243頁)です

事例は、特別支援学校高等部の教員であった原告が、生徒の母親である被告が頻繁に行った学校管理職への要望により、精神的に追い詰められ心身に不調をきたし、休職を経て退職を余儀なくされたと主張して、不法行為に基づく慰謝料の支払いを求めた事件です。

認定事実から見ると、母親は、生徒へ一人通学の指導を実施すること、原告を生徒の指導から外すこと、生徒の通知表から原告の名前を削除することを要望したり、予告なく原告の授業を見学したりを繰り返した。

結論として、東京地裁は、原告の請求を棄却した。

その理由は、原則論として、「学校教育においては、学校、教員及び父母のそれぞれが、子どもの教育の結果はもとより、教員の指導方法を含めた教育の内容及び方法等につき関心を抱くのであって、それぞれの立場から教育の内容及び方法等の決定、実施に対し意見を述べ合いながら協力していくことが必要なものであるから、父母らが学級担任の自己の子どもに対する指導方法について要望を出し、あるいは批判することは許されることであって、その内容が教員としての能力や指導方法に関する批判に及ぶことがあったとしても、直ちに当該教員に対する不法行為を構成するような違法性があるということはできない。」

本件では、「全証拠をみても、被告が原告に対して生徒の指導方法について要望を出した際に原告に対する人格攻撃等があったとか、原告の授業等を見学した際に授業の妨害をおこなった等の事実を認めるべき証拠はない。被告が校長らに対し生徒の指導から原告を外すこと、生徒の通知表から原告の名前を削除すること及びクラスの担任から原告を外すことなどを要望したことについても、被告は直接原告を糾弾等したわけではなく、事柄についての判断は学校長ら管理職に委ねられており、原告を学校から排除することを違法に要望したものと評価することはできない。」と判断した。

ここから、推論すると、要望であっても教員に対する人格攻撃を含むとか、授業の見学であっても授業妨害に及ぶような場合には、親の教員への不法行為になるといえるでしょう。

 

 

相続財産に関する情報と個人情報【判例紹介】

2019-03-25

相続財産に関する情報と個人情報について、最高裁判所が初判例を示しました。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/528/088528_hanrei.pdf

事案の概要

個人情報保護法は、事業者が収集し保有する個人情報について、適正な取り扱いを確保する観点から、個人本人が自分の情報をチェックできるようにして、保有個人データの開示請求権、訂正請求権、利用停止請求権を規定しています。本件は、個人の死亡後に、その相続人が個人の相続財産に関する情報を個人情報保護法に基づき保有個人データの開示請求を行った事案です。

Aは、平成15年8月に、Y銀行で普通預金口座を開設し、銀行に印鑑届出書を提出した。印鑑届出書には、Aの自筆による住所、氏名、生年月日の記載と銀行印の印影がある。Aは、平成16年1月に死亡し、平成15年8月付の自筆証書遺言により、本件預金口座の預金のうち1億円だけを相続人Xに相続させた。相続人Xは、自筆証書遺言が偽造されたものではないかと疑念を抱き、それを確認する資料とするため、Y銀行に対し、Aが提出した印鑑届出書の写しの開示を求める訴訟を提起した。

最高裁の判断

個人情報保護法が,保有個人データの開示,訂正及び利用停止等を個人情報取扱事業者に対して請求することができる旨を定めているのは,個人情報取扱事業者による個人情報の適正な取扱いを確保し,個人の権利利益を保護する目的を達成しようとした趣旨と解される。このような個人情報保護法の趣旨目的に照らせば,ある情報が特定の個人に関するものとして個人情報保護法2条1項の個人情報に該当するかどうかは,当該情報の内容と当該個人との関係を個別に検討して判断すべきである。

したがって,相続財産についての情報が被相続人に関するものとして生前に個人情報に当たるものであったとしても,そのことから直ちに,当該情報が当該相続財産を取得した相続人等に関するものとして個人情報に当たるということはできない。

本件印鑑届出書にある銀行印の印影は,AがY銀行との銀行取引において使用するものとして届け出られたものであった,XがAの相続人等として本件預金口座に係る預金契約上の地位を取得したからといって,当該印影は,XとY銀行との銀行取引において使用されることとなるものではない。また,本件印鑑届出書にあるその他の記載も,XとY銀行との銀行取引に関するものとはいえない。その他,本件印鑑届出書の情報の内容がXに関するものであるというべき事情はうかがわれないから,上記情報がXに関するものとして個人情報に当たるということはできない。

 

解決事例:保険会社から否定された逸失利益を勝ち取る和解解決した

2018-11-12

「保険会社から否定された逸失利益を勝ち取る和解解決をしました」

弁護士 喜 田  崇 之

【はじめに】

交通事故により右肩鍵盤断裂等の傷害を負った原告Xさん(事故当時44歳の男性)は、自賠責保険で後遺障害等級(10級10号)の認定を受けたものの、Xさんが運送会社の経営者であり、役員報酬を受け続けていることを理由に逸失利益が存在しないと保険会社から主張されていた件で、逸失利益が発生していることを前提とする和解を勝ち取りました。

【事案の概要】

Xさんは、2016年5月、大型貨物自動車に乗って赤信号で停止中、普通自動車に後部から追突され、右肩鍵盤断裂等の重症を負いました。Xさんは、治療を続け、自賠責の申請をしたところ、10級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)が認定されました。

Xさんは、従業員が約20名弱の運送会社(一部製造業も営んでいる)の代表取締役であり、一定の役員報酬を受けていました。保険会社は、事故後も、役員報酬に減額がないことを理由として、逸失利益の喪失がない、つまり、後遺障害によって将来にわたる収入減額が起きないと主張し、逸失利益の損害を一切支払わない旨を主張しました。

そこで、弁護士喜田がXさんの代理人に就任し、2017年11月、損害賠償請求訴訟を提起しました。

【裁判の進行】

我々は、Xさんは荷物の積み下ろしを含むトラック運送業務の実務に従事しており、後遺障害によって業務に大きな影響が出ていることからすれば、Xさんが一定の役員報酬をもらっているとしても、それは労務対価性のあるものであって、逸失利益が発生する旨を主張・立証しました。実際に、Xさんの会社の経営状態は、交通事故発生後、Xさんが十分に業務に従事することができないこともあり、やや悪化していました。

これに対し被告側は、事故後も役員報酬の減額がないことを理由として、逸失利益は発生しないという主張を維持しました。

そして、ある程度の主張・立証が尽くされた後、2018年10月、裁判所から和解案が文書で提案されました。

【裁判所の和解案】

裁判所の和解案には、Xさん自身が荷物の積み下ろし等も含むトラック運転業務に従事していることや、当該具体的な業務内容と後遺障害の内容・程度に照らせば、業務への影響が出ていることや、実際に会社の売上にも影響していること等に照らして、逸失利益を認めることが相当であると明確に述べました。その上で、27%の労働能力喪失と、67歳までの逸失利益を具体的な金額で算定しました。

結局、保険会社も裁判所の和解案を受け入れ、訴訟提起前の交渉段階では考えられなかった水準での和解が成立しました。

【最後に】

Xさんが、訴訟提起前に保険会社から提案された金額は、慰謝料等のわずかな金額でした。しかし、訴訟提起し、後遺障害の内容・程度、Xさんの業務内容等との関係、その他の事情等から、役員報酬が維持されているとしても逸失利益が発生していると立証することに成功し、裁判所が我々の主張を全面的に採用してくれました。

このように、保険会社の主張・考え方が、裁判所で維持されるとは必ずしも限りません。法的観点から保険会社の主張が通るかどうかを見極めることが大切です。

交通事故の示談交渉でお困りの方は、ぜひ、一度、ご相談ください。

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