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[労働]に関する記事

【コラム】会社を辞めたい!そんなときに

2020-03-24

会社を辞めたい!

でも、「今辞められると会社に大損害」「次の人が見つかるまで待って欲しい」「会社の規定ですぐには辞められないことになっている」と言われてしまい、なかなか辞められない…。そんな相談を多く聞きます。

最近では、本人に代わって会社に退職を伝える“退職代行サービス”なるものが話題を集めるまでに至っています。

このコラムでは、退職に関するよくある疑問にお答えしましょう。  弁護士清水 亮宏

Q1 契約書や就業規則に「退職には会社の承認が必要」と書かれていたら…?

A  無視して退職しましょう。

【解説】原則として、2週間前に通知すれば、いつでも退職することができます(民法627条1項)。この法律に反して、労働者側に不利な合意をしたとしても、その合意は無効になります(労働者側に有利な合意は可能です。)。会社の承認を条件とする合意や就業規則の規定は、2週間前に通知すればいつでも退職できるとする民法627条1項に違反することになりますので、無効になります。2週間前に通知すれば退職できるのです。

○契約社員の場合(契約期間が定められている場合)

契約社員については、病気で働けなくなってしまった場合など、「やむを得ない事由」があるときに退職することができるとされています(民法628条)。ただし、契約社員についても、就業規則や契約書において、2週間前の通知により退職できる旨を定めている会社がありますので、一度チェックしてみましょう(法律の定めよりも労働者側に有利な合意をすることは可能です。)。また、このような定めがなくとも、会社と合意すれば、いつでも退職することが可能です。

※年俸制の場合には3か月前までに通知する必要があります(民法627条3項)

Q2 「退職の3か月前に申し出なければならない」などと期間が延長されていたら…?

A  必ずしも延長された期間を守る必要はありません。柔軟に対応しましょう。

【解説】原則として、2週間前に通知すれば、いつでも退職することができます(民法627条1項)。この法律に反して、労働者側に不利な合意をしたとしても、その合意は無効になります。2週間より長い期間が定められていたとしても、2週間前に通知すれば退職できると考えてよいでしょう。

この問題については裁判例もあります。高野メリヤス事件(東京地判昭和51年10月29日)では、2週間の期間を延長することはできないと判断されました。「民法第六二七条の予告期間は、使用者のためにはこれを延長できないものと解するのが相当である。従って、変更された就業規則第五〇条の規定は、予告期間の点につき、民法第六二七条に抵触しない範囲でのみ(たとえば、前記の例の場合)有効だと解すべく、その限りでは、同条項は合理的なものとして、個々の労働者の同意の有無にかかわらず、適用を妨げられないというべきである。」

○期間を守っておいた方が無難??

「退職の3か月前」など、あまりに長い期間を定めている場合には無視して退職してよいと思いますが、「退職の1か月前」など、期間があまり長くなく、期間を守っても大きな支障がないような場合には、期間を守っておいた方が“無難”ではあるでしょう。柔軟に対応すればよいと思います。

※契約社員の場合は、「やむを得ない事由」があるときに退職することができるとされています(民法628条)。Q1をご参照ください。

Q3 具体的にどうやって辞めたらいいの??

A  退職届を出しましょう。

退職届を作りましょう。以下のような文面で構いません。

①退職日を決めましょう。有給休暇が残っている場合は、残っている有給の日数を調べて(有給の日数についてはインターネットで調べられます。)、有給を取得する旨も記載するようにしましょう。

②理由は「一身上の都合」で構いません。

③「退職願」ではなく「退職届」にしましょう。「退職願」は、退職を願い出る形になりますので、会社から引き留められる可能性が高まります。退職することを届け出る「退職届」にしておく方が無難でしょう。

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退職届

 この度、一身上の都合により、○○○○年○月○日をもちまして退職いたします。
なお、○○○○年○月○日から退職日までの期間については、有給休暇を取得
いたします。

○○○○年○月○日

 ○○○○ 印

 ○○株式会社

代表取締役 ○○○○ 殿

 

転居命令違反を理由とする解雇を無効とした事例【判例紹介】

2020-02-03

「転居命令」違反を理由とする解雇について、下級審の裁判例を紹介します。

東京地裁平成30年6月8日判決(判例タイムズ1467号185頁)です。

http://www.hanta.co.jp/books/8232/

事例は、被告会社が、原告を東京本社から茨城工場へ配置転換してから1年後に、通勤時間が片道3時間となるということで、茨城工場近くに転居するよう「転居命令」を発したが、原告が従わなかったことから、解雇したという事案です。

東京地裁判決は、「転居命令」についても、転居を伴う転勤命令と同様の判断基準を示し、本件転居命令は業務の必要性を欠き権利濫用であって無効と判断しました。

「被告会社は、原告との個別の合意なくして原告の勤務場所を決定し、勤務先の変更に伴って居住地の変更を命じて労務の提供を求める権限を有する。さらにその権限に基づき、使用者は、配置転換等の業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所や居住地を決定することができる。しかしながら、転居は、一般に労働者の生活環境に少なからず影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権(転居命令権)は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することは許されない。」とし

①業務上の必要性が存在しない場合、②他の不当な動機、目的をもってなされた場合、③労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合の基準を示しました。

本件転居命令について、①原告は片道3時間であるが、配転後1年間、無遅刻無欠勤で通勤している、②原告が長時間通勤や身体的疲労を理由に仕事の軽減や業務の交替を申し出たことがない、③原告の業務は、早朝夜間の勤務の必要なく、緊急時に対応するという必要も考え難い業務である、として、原告が工場の近くに転居しなければ労働契約上の労務の提供ができないとはいえず、業務の必要性がないと判断しました。

「転居命令」が独立で発せられ、争われた事例は見当たらないそうで、裁判所が、転居を伴う転勤命令と同様の判断基準を示したこと、実際の事例に当てはめて判決したことが参考になります。

「名ばかり事業主」問題

2020-01-04

「名ばかり事業主」問題  弁護士 清水亮宏

一昔前、形だけ管理職扱いにして残業代を支払わない「名ばかり管理職」が話題になりました。最近は、実態が労働者であるにもかかわらず個人事業主と扱われる「名ばかり事業主」が話題を集めています。

「名ばかり事業主」という言葉を聞いたことがない方もいらっしゃるかと思います。「名ばかり事業主」というのは、働く時間・場所や仕事の方法などが会社に決められるなど、本来の個人事業主とは異なる様々な拘束を受けており、働き方がまさに「労働者」であるにもかかわらず、会社から、個人事業主(委任や請負など)として扱われる人達のことです。美容師・エステティシャン、システムエンジニア、トラックドライバー、建設業などに多いと言われています。

「名ばかり事業主」は、会社からは個人事業主として扱われているため、労働基準法に定められた労働時間・休日等に関するルール(1日8時間・週40時間の原則、休憩時間の取得、休日、有給休暇など)や、最低賃金法が適用されない扱いとなっています。長時間労働や最低賃金以下の低賃金など、現場の過酷な声も耳にします。労働基準監督署に相談しても、「あなたは労働者ではないから。」と門前払いされてしまうケースも…。

しかし、働く時間や場所などが決められていたり、仕事の具体的な内容を細かく指示されていたり、報酬が時間に応じて支払われるなど、実際の働き方が「労働者」であれば、労働基準法などの労働関係法の適用を受けることができます。会社が名目上個人事業主として扱えば、直ちに労働基準法などの法律が適用されなくなるわけではありません。あくまで働き方の実態で判断するのです。

では、「ちゃんと労働者として扱って欲しい!」「まともな働き方がしたい!」という人はどうすればよいのでしょうか。おすすめは、労働問題の専門家である労働組合や労働問題を扱う弁護士への相談です。専門家のサポートを受けながら会社と交渉することで、雇用化や労働条件改善の道が開けます!

最近では、ヤマハ英語教室の英語講師やウーバーイーツの配達員が労働組合を結成するなど、労働組合を結成して会社と対等に交渉することを目指す動きもあります(ヤマハ英語講師の組合結成には私も関与させていただきました。)。労働組合や弁護士が労働組合結成のサポートすることもできます! お困りの方は、ぜひ関西合同法律事務所にご相談ください。

パート・アルバイトの労働条件格差是正

2020-01-02

パート・アルバイトの労働条件格差是正を勝ちとる    弁護士 河村学

1 なぜ労働条件がこんなに違うのか。

同じ仕事をしているのに、なぜこんなに給料や手当が違うのか?。パート・アルバイトなど非正規社員として働く方々でそういう疑問を持たれる方は多いと思います。確かに変ですよね。同じように自宅から職場に通勤しているのに、正規社員には通勤費を支給するけど、パートには支給しなかったり。また、正規社員と同じように(場合によっては正規社員以上に)働いているのに、パート・アルバイトという名前で採用されただけで、給料が半分にされたり、賞与や退職金が支給されなかったり。使用者が、さしたる根拠もなく、正規と非正規の労働条件に格差を設けているため、パート・アルバイトの多くが低処遇に苦しむ実態があります。

2 立ち上がる労働者

こんな格差をなくそうとパート・アルバイトとして働く方が立ち上がり、各地で裁判が起こされています。名付けて「20条裁判」。労働契約法20条という条文を根拠に、正規社員との、不合理な格差は認められないとして、その差額の支払いを請求するものです。これまでに出た判決では、通勤手当、住宅手当、皆勤手当、休職手当、無事故手当、作業手当、早出残業手当、時間外手当、年末年始手当、夏期冬期休暇、病気休暇などさまざまな手当・休暇について、正規と非正規の格差は不合理として、差額の損害賠償が認められています。最高裁までたたかったある事件では、不合理な格差として認定された手当類を合計すると月額3万円を超える額になりました。

格差是正はこうした手当類にとどまりません。私が担当している事件では、アルバイトに賞与(ボーナス)を支給しないのは違法であると裁判したところ、正規社員の賞与支給率の6割を支給しなければ違法という判決が出されました(現在最高裁に係属中)。また、別の裁判では、退職金についても一定額を出さなければ違法としたり、基本給についてあまりに大きな格差は違法とする判決も出されています。

3 運動があってこその変化

このような変化が起きているのは、格差是正を求める長年の取り組みと、政権交代まで実現した世論の動きがあったからで、決して、現在、安倍内閣が「働き方改革」と称してすすめている施策があるからではありません。むしろ現在の施策は、無期契約社員同士の格差を温存し、また最低賃金の大幅引き上げを拒むなど、安心で公正な働くルールの設定に背を向けています。不合理な格差を是正する取り組みを、労働組合などを通じて旺盛に取り組むことこそが、働きやすい社会をつくる一歩です。

 

整理解雇【判例紹介】

2019-05-30

私立大学の学部廃止を理由とする大学教授らの整理解雇について下級審の裁判例が示されました。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/728/088728_hanrei.pdf

事例は、学校法人が淑徳大学国際コミュニケーション学部の廃止を理由に2017 年3月、同学部の教授であった3人の教員を整理解雇し、解雇された3人が原告として、東京地裁に地位確認・賃金支払を求めて提訴した事件です。

整理解雇が有効であるためには、①人員削減の必要性があること、②解雇回避努力が尽くされたこと、③人選基準とその適用が合理的であること、④解雇手続が相当であることの4つの要件が必要とされています。

本件での判断は、①人員削減の必要性について、国際コミュニケーション学部において定員割れが継続していたことから学部を廃止する必要性はあったものの,被告の学校法人の財務状況が相当良好であったことから,整理解雇をしなければ経営危機に陥ることは想定しがたい。原告の大学教授は,新設された人文学部における一般教養科目や専門科目の相当な部分を担当することができたこともあり人員削減の必要性が高度にあったとはいえない。

②解雇回避努力について、被告の学校法人は,希望退職に応じた場合には退職金に退職時の本棒月額12ヶ月分の加算金を支給することを提案したが,それでは足りない。被告の学校法人の附属機関や他学部に配置転換させて教授を継続させることも可能であったことから,被告は解雇回避努力を尽くしていない。

④解雇手続の相当性について、被告は原告に対して,解雇の必要性や配置転換できない理由を十分に説明したとは言えず,労働組合からの団体交渉の申し入れを拒否していることから解雇手続としては不相当。

結論として、東京地裁は、整理解雇を無効と判断しました。

整理解雇について労働者に有利な判断をした下級審の裁判例です。

 

 

 

 

 

 

「教員の働き方を考える」つどい

2018-09-10

「教員の働き方を考える」つどい

弁護士 清水 亮宏

2018年7月19日、働き方ASU-NETとの共催で、「教員の働き方を考える―長時間労働・有期雇用・ブラック経営―」と題する集会を開催しました。開催場所はエル・おおさか、参加者は66名でした。

教員の労働問題に詳しい内田良名古屋大学准教授の講演「教師のブラック残業に迫る」では、教員の長時間労働の問題や、労働時間が適切に管理されていない問題について、統計や教員の声等を紹介しながらわかりやすく報告いただきました。また、ブラック部活動や給特法の問題など、教員に特徴的な労働問題について、現状と背景をご説明いただいたほか、“子供のため”“楽しい”といった理由で教員が長時間労働に陥ってしまう構造的(心理的)な背景についても説明がありました。最後には、制度設計なき部活動や制度設計なき長時間労働をなくしていく必要があると締めくくられました。

その後、関西大学労基申告解雇事件の弁護団から、事件の経過報告等について説明があったほか、関西大学初中高教職員組合・原告本人から、支援の訴えがありました。
続いて、リレートーク「教育現場で何が起きているのか」が行われました。

私学教員ユニオンの坂倉昇平さんからは、私学教員には給特法が適用されないが、教員自身がこのことを知らず、適法であると思い込まされていること、私学教員にも長時間労働が蔓延しており、打ち合わせの時間を確保することすら難しい状況にあること等、私学教員の働き方に関する現状報告がありました。また、教員の意識を変えていくこと、既に立ち上がっている人が闘っている姿を見せていくことが重要であるとの問題提起がありました。

近畿大学教職員組合書記長の浜田太郎さんからは、みなし残業代、変形労働時間制、労働時間の適正管理の問題、業務の範囲と自発的な活動の区別のあいまいさ等、労働時間に関する様々な問題点を報告いただきました。また、情報を共有して共闘する取り組みが必要であり、今後、組合の相互の連帯が重要となるとの問題提起をいただきました。

関西大学初中高教職員組合委員長の大谷和海さんからは、教員の多忙化、事務作業の増加、研修機会の増加等、教員の長時間労働について現状報告がありました。また、クラブ活動を労働時間として認めさせるための組合の取組みについても報告をいただきました。そして、分断されないようにすることが重要、動けば風は変わってくる、連携を取りながら闘っていきたいとの問題提起をいただきました。

関西圏大学非常勤講師組合書記長の江尻彰さんからは、大学の非常勤講師が3、4の大学を掛け持ちしている現状や、 コマ程度を担当しないと生活が厳しいという現状等について報告をいただいたほか、5コマで最低生活ができることを目指した労働組合としての取り組みについても報告をいただきました。最後には、無関心を変えていくことが重要であるとの問題提起をいただきました。

今回のつどいは、教員の働き方の問題について現状を共有し、団体の枠を超えて運動を広げていく必要性を認識できる非常に良い機会であったと思います。参加者に教職員組合の関係者が多く、問題認識を共通する人々が一堂に会することができたのも今回のつどいの特徴であると思います。運動の輪を広げ、教員の働き方を変えていくきっかけとなる集会になりました。

民主法律時報2018年9月号より

労働契約法20条最高裁判決について

2018-08-15

労働契約法20条最高裁判決について

弁護士 河村  学

1 はじめに

最高裁は、2018年6月1日、労働契約法20条の解釈が問題となる事案(ハマキョウレックス事件・長澤運輸事件。以下、それぞれ「ハ事件」「長事件」)で、初めての判断を示した。
本稿では、判決内容の概略を述べるとともに、その意義と今後の課題を論ずる。

2 判決の内容

(1) 最高裁が示した労契法20条の解釈について、一般論として重要な点は次の7点である。
① 労契法20条の趣旨につき、有期雇用労働者(以下「有期社員」)は、無期雇用労働者(以下「正社員」)より、「合理的な労働条件の決定が行われにくく、両者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ」たものであり、「職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定である」とした。
② 同条違反の効力につき、同条に違反する労働条件の相違を設ける部分は無効としたが、その場合でも労働条件が正社員と同じにはならないとした。有期社員は、本条違反を理由に賃金請求や地位確認請求をすることはできず、損害賠償請求をすることになる。
③ 同条にいう「期間の定めがあることによる相違」とは、労働条件の相違が「期間の定めの有無に関連して生じたものであること」とし、適用される就業規則の違いによって労働条件が相違する場合には、この要件を満たすとした。
④ 同条にいう「不合理と認められるもの」とは、労働条件の相違が「不合理であると評価することができるものであること」とした。
⑤ 不合理性の立証責任について、不合理であるとの評価を基礎付ける事実については20条違反を主張する側が、その評価を妨げる事実についてはこれを争う者がそれぞれ主張立証責任を負うとした。
⑥ 同条にいう「その他の事情」とは、職務内容及び変更範囲に関連する事情に限定されないとし、有期社員が定年再雇用された者であることはこれに当たるとした(長事件)。
⑦ 賃金が複数の賃金項目から構成されている場合は、総額を比較することのみによるではなく、賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきとした。但し、「ある賃金項目の有無及び内容が、他の賃金項目の有無及び内容を踏まえて決定される」という事情も考慮されるとした。

(2) 最高裁は、個別事案について、①労働者側が挙げている正社員と比較し、②問題とされている賃金項目毎にその趣旨を判断し、③その趣旨と、職務の内容の異同との関連、変更範囲の異同との関連、その他の事情の有無及びその関連を順次検討して、不合理性を判断している。

例えば、ハ事件では、①請求している有期社員と同じ職場で同じ業務に従事する正社員とを比較し、職務内容は同じだが、正社員は転居を伴う転勤があるので変更の範囲は異なるとした。②次に、請求されている各手当毎にその趣旨を解釈し、例えば、無事故手当については、その趣旨を「優良ドライバーの育成や安全な輸送による顧客の信頼の獲得を目的として支給されるもの」とし、③各考慮事情について、職務内容は異ならないから、安全運転及び事故防止の必要性に差異は生じない、この必要性は変更の範囲が相違するという事情により異ならない、その他、不合理であるという評価を妨げるその他の事情もうかがわれないとして、相違を不合理とした。

また、住宅手当については、その趣旨を「従業員の住宅に要する費用を補助する趣旨で支給されるもの」とし、正社員については転居を伴う配転が予定されているため、契約社員と比較して住宅に要する費用が多額となり得るとして、相違を不合理でないとした。

(3) 結論として、比較対象の正社員と職務内容が同一で変更の範囲が異なるとされたハ事件では、皆勤手当、無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当の相違を不合理とし、住宅手当の相違は不合理と認めなかった。

また、比較対象の正社員と職務内容及び変更の範囲は同じだが、有期社員が定年後再雇用であるという事情が「その他の事情」で考慮された長事件では、精勤手当、超勤手当を不合理とし、能率給・職務給、住宅手当・家族手当、役付手当、賞与の相違については不合理と認めなかった。

3 両判決の意義と今後の課題

最高裁は、労契法20条がいわゆる均等待遇ではなく、均衡処遇を求めたものである点を明確にしたが、均衡を欠く労働条件の相違を無効・違法とすることで正社員と有期社員との格差是正を図りうることを認めた。これは同条の制定経過等からしても当然のことであるが、雇用形態の違いによる差別是正を頑なに拒んできた裁判所を変えさせた労働者の歴史的勝利であり、また、実際にも、例えばハ事件の場合、有期社員に全部の手当が適用されると月額3万3500円以上の賃金増になるのであって、格差是正の効果は極めて大きいものである。格差と貧困是正の要求を立法課題にし、政権交替まで引き起こした運動の成果が現れたものである点、法律による労働規制がいかに重要であるかを示した点を確認する必要がある。

ただ、労契法20条は、相対規制であり、最低賃金規制や労働時間規制のような絶対規制ではない。正社員の処遇を低めることによっても格差は是正されるのであって、現に、日本郵政では、第1審判決後に、不合理とされた相違について正社員の労働条件を引き下げること、無期雇用労働者の中で差別化を図ることが行われている。最高裁の判断も現政権の政策の許容範囲という面があるのであり、このことは、均等待遇・均衡処遇を求める運動は中核的正社員以外の多くの正社員の労働条件向上と併せて行わなければならないことを示している。

最高裁の20条解釈としては、「その他の事情」を無限定にしている点など種々の問題があり、また、両事件とも職務内容が同一とされた事案であった点(長事件は変更の範囲も同じ)、長事件は定年後再雇用という事案であった点など事案の特殊性があり、他の事案にどう適用されるかも今後の課題である。
今後とも、格差と貧困是正の運動との一つの手段として、各職場での労働条件の相違を総点検する取組み、 条を活用した差別是正の取組みを大いにすすめる必要がある。

民主法律時報2018年7.8月合併号より

過労死防止大阪センターシンポに参加して

2018-05-25

過労死防止大阪センターシンポに参加して  弁護士 須井康雄

2018年4月20日エルおおさか本館視聴覚室で過労死防止大阪センターシンポが開催された。
過労死防止大阪センターは、2014年の過労死等防止対策推進法の成立・施行を受け、2015年3月13日に発足し、大阪で過労死等の防止と救済に取り組むことを目的としている。

シンポの冒頭、民主法律協会の会員でもある松丸正センター代表幹事と来賓の綿貫直大阪労働局労働基準部監督課課長より挨拶があった。

その後、大和田敢太滋賀大学名誉教授より「過労死と職場のハラスメント」という演題で講演があった。大和田名誉教授は、ハラスメントの類型が30種類以上ある現状では、被害者側がハラスメントの類型を立証しなければならないため、包括的なハラスメントの定義が必要だとされた。また、日本に特徴的な業務型ハラスメント(長時間労働、過重なノルマ、指導研修、懲罰的労働など)では、加害者側も被害者も、業務という形をとるがゆえに、ハラスメントであることを自覚しにくいため、当事者の心がけの取組だけに終わらせず、仕事配分のあいまいさや不均衡是正といった労働組織の問題点にまで踏み込んだ対策・規制が必要だと指摘した。なお、さらに詳しく知りたい方は、2018年2月に出版されたばかりの大和田名誉教授著「職場のハラスメント なぜ起こり、どう対処すべきか」(中公新書)をご覧ください。

その後、棗一郎日本労働弁護団幹事長より働き方改革をめぐる国会情勢の報告があり、続いて、民主法律協会の会員でもある岩城穣弁護士から、過労死防止法と大綱の改正課題について報告があった。過労死防止法では、施行後3年をめどとして必要な措置を講じることとされている。岩城弁護士は、労働時間を正確に把握し、残業代をきちんと払うことが精神的なストレスの減少につながることが国の調査で明らかになったことや、今後、自動車運転業務、教員、ITなど重点業種について調査が行われること、国に対して、労働時間の適正把握、ハラスメント対策の法制化などの意見を出していくと報告した。

最後に、過労自死で息子さんを亡くされたご遺族の訴えがあり、過労死等をなくすためさらに活動を発展させていくことを確認し、シンポは幕を閉じた。(民主法律時報2018年5月号より)

 

労働契約法20 条を活用した運動を‐日本郵便西日本事件大阪地裁判決

2018-03-21

労働契約法20 条を活用した運動を‐日本郵便西日本事件大阪地裁判決  弁護士 河村  学

1 はじめに

労働契約法20条をめぐっては、2013年4月1日の法施行後、いくつかの下級審判決が出されてきたが、うち二つの事件(長澤運輸事件、ハマキョウレックス事件)について、最高裁は、2018年4月20日と23日に弁論を開くと決めている。
早晩、最高裁が本条に関し初判断を行うことになるが、この条項を労働者の運動に役立つものにできるか否かは、むしろ現在及び最高裁判決後の取り組みにかかっているといえる。
本稿で紹介する、日本郵便西日本事件判決(大阪地判平30・2・21。裁判官は内藤裕之、三重野真人、池上裕康。以下「本判決」という)は、裁判所を利用する運動の一つの到達である。

2 事案と判決の内容

本件で問題としたのは、日本郵便の外勤業務に従事する労働者(各戸に郵便配達をしている労働者等)が、正社員か、期間雇用社員かによって、業務内容は全く同じであるにも関わらず、著しい労働条件の格差があるという点である。

問題とした労働条件は多岐にわたるが、大きく分けると、①勤務をしたことに伴う手当(外務業務手当、郵便外務業務精通手当、年末年始勤務手当、早出勤務等手当、祝日給、②夏期・年末手当(賞与)、③福利厚生的手当(住宅手当、扶養手当)、④休暇(夏期・冬期休暇、病気休暇)の各相違である(原告は8名)。

本判決は、比較対象となる正社員を旧一般職と、2016年4月1日から導入された新一般職(限定正社員のようなもの。無期契約であるが、旧一般職と労働条件に格差があり、また、規定上配転の範囲が限定されるなどしている)との「職員群」に分け、それらと期間雇用社員との各種手当等の格差の不合理を問題にし、以下のように、①のうち年末年始勤務手当と、③の住居手当、扶養手当について、格差が不合理であると認めた。

年末年始勤務手当とは、正社員が12月29日から30日までの間に勤務した場合一日4000円、1月1日から3日の間までの間に勤務した場合一日5000円を支給するという手当である(期間雇用社員には支給なし)。本判決は、この手当は繁忙期に業務に従事したことに着目して一律に支給されるものであり、その趣旨は期間雇用社員にも妥当するなどとし、また、個別の集配に関しては、正社員と期間雇用社員に顕著な相違はないとして、旧一般職との比較においても格差は不合理とした。

住居手当とは、正社員の家賃・住宅ローンの負担額に応じて最大2万7000円を支給するという手当である(期間雇用社員には支給なし)。本判決は、この手当の趣旨は主として配転に伴う住宅に係る費用負担の軽減であるところ、転居を伴う配転が予定されていない新一般職にも支給されていることからすると、新一般職との比較においては格差は不合理とした。

扶養手当とは、正社員の扶養親族の状況に応じて、配偶者1万2000円、子一人3100円などを支給する手当である(期間雇用社員には支給なし)。本判決は、この手当の趣旨は労働者・扶養親族の生活保障給という性質を有しており、職務の内容等によりその支給の必要性が大きく左右されるものでないことなどから、旧一般職との比較においても格差は不合理とした。

ほぼ同一の事案につき先行して出されていた日本郵政東日本事件判決(東京地判平29・9・14)よりも格差是正に踏み込んだ判決と評価できる。

3 判決の問題点と今後の取り組み
本判決には、ここには到底書き切れない事実認定上、法解釈上のさまざまな問題があり、はっきり言って、時代に遅れた裁判所の、さらに遅れた判断ではある。
ただ、それでも判決が、結論として、業務関連手当の一つや住宅手当・扶養手当の相違を不合理と認めたこと、その相違の全てを損害と認めたことの意義とその影響は極めて大きい。「非正規」とされる多くの労働者が、何の合理性もない格差に苦しみ、あたかも社会的身分であるかのように格差を当然視されてきたのだから。
最高裁においていかなる判決が出ようとも、均等待遇への道をさらに広げなければならないし、そうした社会に変革しなければならない。(自由法曹団通信2018年3月21日号より)

「パタハラ」って知っていますか?

2018-01-16

「パタハラ」という言葉を知っていますか?

「マタハラ」は、よく聞きますね。「マタニティ・ハラスメント」の略で、職場において女性労働者に対して行われる、上司・同僚からの、妊娠・出産したことあるいは育児休業制度等の利用に関するいやがらせを指します。
妊娠を理由に女性従業員に退職を求めたり、育児休業を理由に女性従業員を降格させるなどといったことが典型例です。

「パタハラ」はこれと対をなす言葉で、「パタニティ・ハラスメント」の略です。
パタニティーとは「父性」という意味で、「パタニティー・ハラスメント」は、父親とはこうあるべきだという固定観念に基づいて、職場において男性労働者に対して行われる、上司・同僚からの、育児休業制度等、子の養育に関する制度の利用に関するいやがらせを指します。
男性従業員による育児休業取得を拒んだり、育児休業取得を理由に降格させるなどといったことが典型例です。

男女雇用機会均等法が改正され(平成29年1月1日施行)、事業主に対して、「職場における妊娠、出産、子の養育に関する制度利用を理由とするハラスメントを防止するために必要な措置をとる義務」が法律上明記されました。
その一環として、厚生労働省の指針により、「就業規則等においてマタハラ・パタハラについて懲戒の対象となることを明確にし、これを従業員に周知・啓発すること」が義務付けられています。
育児介護休業法が改正され(平成29年1月1日施行)、「子の養育又は家族の介護に関する制度利用を理由とするハラスメントを防止するために必要な措置をとる義務」も、法律上明記されました。
その一環として、「就業規則等において子の養育又は家族の介護に関する制度利用を理由とするハラスメントについて懲戒の対象となることを明確にし、これを従業員に周知・啓発すること」が義務付けられています。

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地下鉄/谷町線・堺筋線 南森町駅
2号出口から 徒歩 約10分

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