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[労働]に関する記事

フリーランスに対するハラスメントを違法とする東京地裁判決

2022-08-02

弁護士 清水亮宏

 2022年5月25日、東京地方裁判所は、フリーランスに対するハラスメントを違法とする判決を出しました。

事案は、エステサロンを経営する会社との間で、ウェブサイトの記事執筆等を内容とする業務委託契約を結んだフリーライターの女性が、会社の代表者からセクシュアルハラスメント(打ち合わせ中に性体験を聞かれる、下半身を触られるなど)を受けたとして、会社と代表者に対して、慰謝料などの支払いを求めたというものです。東京地方裁判所は、会社とその代表者に、慰謝料150万円を認め計188万円の支払いを命じました。この判決では、代表者の言動が女性の性的自由を侵害すると指摘するとともに、会社にも安全配慮義務が認められると判断しました。

パワハラやセクハラをはじめとする「ハラスメント」は、会社と雇用契約を結んで働く「労働者」を対象としたものであると考えがちですが、労働者に限定されるわけではありません。近年も、スポーツ業界のハラスメントが度々問題となるなど、広くハラスメントの防止を求める声が高まっています。

フリーランスに関しては、日本俳優連合等が「フリーランス・芸能関係者へのハラスメント実態アンケート」を実施し、厚労省に提出した上で、フリーランスに対するハラスメントの防止を呼びかけるなど、社会的な動きも見られるところでした。

今回の東京地裁判決は、フリーランスに対するハラスメントも違法となり、加害者個人だけでなく、取引関係にある会社も賠償責任を負うことを明確にした点で非常に意義があるものです(会社側が控訴せず、判決が確定したとのことです。)。

取引先等からハラスメントを受けた場合、今回の判決を活用できるかもしれません。また、私たちがハラスメントの加害者にならないように注意することも大切ですね。

悩んでいる方がいらっしゃいましたら、ぜひ当事務所にご相談ください。

ローソン店舗従業員がローソン本部と画期的和解

2022-01-11

ローソン従業員がローソン本部と画期的和解                   弁護士 清水亮宏

ローソンの加盟店オーナーが経営する店舗で働いていた従業員が、給与・残業代未払いやオーナーによるパワハラの被害を受け、ローソン本部とオーナーを提訴していた事案で、画期的な和解が成立しました。

当事者となったローソン従業員は、オーナーから日常的に暴力・暴言等のパワハラを受けていました。深刻な長時間労働も存在し、休日はほとんどなく(1年を超える連続勤務もありました。)、店舗内に24時間以上滞在することも珍しくありませんでした。しかも、ある時期から給料が支払われなくなったのです。

従業員は、ローソン本部とオーナーに対し、未払い給料約1000万円、慰謝料300万円余りの損害賠償を求めて大阪地裁に提訴しました。約6年の審理を経て、2021年6月に和解が成立しました。ローソン本部が、原告に対し、一定の解決金を支払うとともに、労働関係法(労働基準法など)の遵守について加盟店に指導を行い、従業員が働く喜びを感じる職場環境の整備に努めること等を内容とするものです。「直接の雇用関係にないローソン本部がどこまでの責任を負うのか」というのこの裁判の課題でしたが、この点を克服する内容の和解をすることができ、弁護団としても好意的に受け止めています。

本事件は、複数人の弁護団で取り組んでおり、関西合同法律事務所の喜田崇之弁護士も弁護団の一員でした。

フジ住宅ヘイトハラスメント裁判 高裁でも勝訴

2022-01-06

フジ住宅ヘイトハラスメント裁判 高裁でも勝訴                                 弁護士 西口加史仁

2021年11月18日、大阪高等裁判所で、フジ住宅ヘイトハラスメント裁判の控訴審判決が言い渡されました。原告側の勝訴と評価できる内容です。関西合同法律事務所の河村学弁護士、清水亮宏弁護士および西口が、同裁判の原告弁護団の一員として闘っていますので、同裁判の顛末を報告します。

この裁判は、フジ住宅や同社の会長が従業員に配布していた資料(書籍・論文・従業員の感想文など)の中に「韓国人はうそをつく国民性」などのヘイトスピーチを含む内容が大量に含まれていたこと等を理由に、フジ住宅の従業員が、慰謝料などの支払いを求めた裁判です。

2020年7月2日、大阪地方裁判所堺支部で、「社内において全従業員に対し、ヘイトスピーチをはじめ人種民族差別的な記載あるいはこれらを助長する記載のある文書や会長が信奉する(政治的)見解が記載された文書を大量かつ反復して配布する行為」などの違法性を認め、会社及び会長に110万円の支払いを命じる判決が出されました。

これに対し、会社及び会長は判決を受け入れることなく控訴し、また、原告側も一審判決の不十分な点を是正すべく控訴しました。さらに、一審判決後も、会社は資料配布をやめる気配は無く、相変わらず人種差別的な資料を配付し続けました。加えて、「原告は今も在籍して働いていると思うと虫唾が走ります」などと原告攻撃を内容とする他の従業員の感想文を大量に配布するなど、原告に向けた攻撃もより一層激しさを増すようになりました。

このような事態を受け、原告側は、控訴審で人種差別的資料及び原告個人攻撃資料の配布を差し止める請求を追加するとともに、直ちに配布を禁ずるべく仮処分も申し立てました。そして、控訴審判決は、一審判決に引き続き、会社及び会長が行ってきた人種民族差別的な資料配布などの違法性を認め、損害賠償額を増額して会社及び会長に132万円の支払いを命じ、さらに資料配布の差止めを命じました。また同時に、直ちに配布を禁ずる仮処分命令も出しました。

そして、判決では、職場において差別的思想が醸成されないないよう雇用主に配慮を求める職場環境配慮義務が肯定されています。企業におけるレイシャル・ハラスメント(人種に関するハラスメント)の根絶の足掛かりになる判決となることを期待しています。もっとも、会社及び会長は、未だに判決を受け入れることなく争う姿勢を見せており、裁判は続く見通しです。職場における労働者の人格権保障のため、会社が変わってくれることを信じて今もなおフジ住宅で働き続ける原告とともに我々弁護士や支援者達が一体となって、今後も闘っていきます。この記事をご覧の皆様にも、引き続き、大きなご支援をお願いいたします。

はたらく者の待遇を平等に~日本郵政事件最高裁勝利判決~

2020-11-30

はたらく者の待遇を平等に~日本郵政事件最高裁勝利判決~

          弁護士 河村 学

1 パート・アルバイト・契約社員・派遣など非正規で働く人たちに朗報です。これまで、非正規で働く人たちは、「非正規」だからという理由で差別され、給料は安くて当たり前とか、手当が付かないのは仕方がないとか思わされてきました。しかし、多くの「非正規」で働く人たちは、心の中では「正社員とほとんど同じ仕事をしているのに、どうしてこれほどまでに格差があるのか」「差別ではないか」と思っていたはずです。2020年10月15日に出された日本郵政事件を含む5つの最高裁判決は、戦後はじめて「非正規」で働く人たちには「不公正な処遇」が行われていることを認め、その格差の賠償を使用者に命じました。まさに歴史的快挙です。

2 日本郵政事件では、年末年始手当(正社員には郵便局の職員は年末年始も働かなければならないという理由で特別手当が出されていましたが、期間雇用社員には出ていなかった)を支給しないのは違法とされました。

また、夏期冬期休暇(正社員には法律で定められている年次有給休暇とは別に特別な夏休み、冬休みがありましたが、期間雇用社員には与えられていなかった)を与えないのは違法とされました。

さらに、正社員に支給されている住宅手当・扶養手当について、「相応に継続的な勤務が見込まれる」期間雇用社員について支給しないのは違法とされ、病気休暇(正社員には病気で休まざるを得ないときにも給料が保障されるが期間雇用社員は無給だった)についても違法とされました。

この事件だけでも、支給対象となる期間雇用社員に対して多額の損害賠償が認められました。

3 これらの手当を支給している会社はどこにでもあります。同じように問題にすれば、非正規の格差是正は一気に進む可能性がありますし、生活改善に繋がっていくでしょう。中小零細の事業主は、大企業や国等に応分の負担を求め、これを非正規の処遇改善につなげる取り組みをしましょう。同じような仕事をしている人が、同じように報われる社会を実現するため、さらに取り組みを強めていきましょう。

【債権法改正】消滅時効の規定が変わりました

2020-09-07

弁護士 高橋早苗

 2020年4月1日から改正された民法が適用されるようになりました。今回の改正された条文は多数ありますが、ここでは消滅時効について説明します。

消滅時効とは、権利を行使しないままでいると一定期間経過後にその権利が消滅してしまうという制度です。これまでは、原則的には権利を行使することができるとき(例えば個人の間でのお金の貸し借りなどの場合は返済期限)から10年とされていましたが、飲食代や宿泊代は1年、弁護士の報酬は2年、医師の診療報酬は3年など職業によって10年より短期の消滅時効が定められているものもありました。また、商行為によって生じた債権は「商事消滅時効」として5年とされていました。

今回の改正では、原則として一律に「権利を行使することができると知った時から5年」、「権利を行使することができる時から10年」とされました。

ただし、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権(債務不履行によるものも不法行為によるものも)の時効期間は原則と異なり、損害および加害者を知った時から「5年」、権利を行使することができる時から「20年」の時効にかかるとされました。生命・身体への侵害はそれ以外に対する侵害よりも重大ですから、時効期間をこれまでの3年から5年へと長期化したのです。これに対し、不法行為によって生命・身体以外の損害を受けた場合(例えば自分の所有物を壊されたなど)の不法行為に基づく損害賠償請求権は、これまでと変わらず、損害及び加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年の時効にかかります。

なお、労働基準法も改正され、2020年4月1日以降に支払日がくる労働者の賃金請求権の消滅時効は,従来の2年から3年に延長されました(労基法115条で5年とされましたが,同法143条2項で当分の間3年とされました。)。

また、今回の改正ではこれまで時効の「中断」と呼ばれていたものを「更新」、「停止」と呼ばれていたものを「完成猶予」と呼び用語をわかりやすくしました。時効の「更新」とは、更新事由があれば時効期間がリセットされ、また一から時効期間が始まるという制度です。これに対し、時効の「完成猶予」とは、時効期間が進行しているものの、猶予の事由が生じている間は、時効の進行が止まり時効が完成しないという制度です。猶予事由が終了すると、引き続き残りの時効期間が進行することになります。当事者間の協議による時効の完成猶予の制度も新設されました。

どのような事由が「更新」や「完成猶予」にあたるか、ご自身の請求権やご自身の抱える債務が時効にかかるかどうかなど、ぜひご相談ください。

【コラム】会社を辞めたい!そんなときに

2020-03-24

会社を辞めたい!

でも、「今辞められると会社に大損害」「次の人が見つかるまで待って欲しい」「会社の規定ですぐには辞められないことになっている」と言われてしまい、なかなか辞められない…。そんな相談を多く聞きます。

最近では、本人に代わって会社に退職を伝える“退職代行サービス”なるものが話題を集めるまでに至っています。

このコラムでは、退職に関するよくある疑問にお答えしましょう。  弁護士清水 亮宏

Q1 契約書や就業規則に「退職には会社の承認が必要」と書かれていたら…?

A  無視して退職しましょう。

【解説】原則として、2週間前に通知すれば、いつでも退職することができます(民法627条1項)。この法律に反して、労働者側に不利な合意をしたとしても、その合意は無効になります(労働者側に有利な合意は可能です。)。会社の承認を条件とする合意や就業規則の規定は、2週間前に通知すればいつでも退職できるとする民法627条1項に違反することになりますので、無効になります。2週間前に通知すれば退職できるのです。

○契約社員の場合(契約期間が定められている場合)

契約社員については、病気で働けなくなってしまった場合など、「やむを得ない事由」があるときに退職することができるとされています(民法628条)。ただし、契約社員についても、就業規則や契約書において、2週間前の通知により退職できる旨を定めている会社がありますので、一度チェックしてみましょう(法律の定めよりも労働者側に有利な合意をすることは可能です。)。また、このような定めがなくとも、会社と合意すれば、いつでも退職することが可能です。

※年俸制の場合には3か月前までに通知する必要があります(民法627条3項)

Q2 「退職の3か月前に申し出なければならない」などと期間が延長されていたら…?

A  必ずしも延長された期間を守る必要はありません。柔軟に対応しましょう。

【解説】原則として、2週間前に通知すれば、いつでも退職することができます(民法627条1項)。この法律に反して、労働者側に不利な合意をしたとしても、その合意は無効になります。2週間より長い期間が定められていたとしても、2週間前に通知すれば退職できると考えてよいでしょう。

この問題については裁判例もあります。高野メリヤス事件(東京地判昭和51年10月29日)では、2週間の期間を延長することはできないと判断されました。「民法第六二七条の予告期間は、使用者のためにはこれを延長できないものと解するのが相当である。従って、変更された就業規則第五〇条の規定は、予告期間の点につき、民法第六二七条に抵触しない範囲でのみ(たとえば、前記の例の場合)有効だと解すべく、その限りでは、同条項は合理的なものとして、個々の労働者の同意の有無にかかわらず、適用を妨げられないというべきである。」

○期間を守っておいた方が無難??

「退職の3か月前」など、あまりに長い期間を定めている場合には無視して退職してよいと思いますが、「退職の1か月前」など、期間があまり長くなく、期間を守っても大きな支障がないような場合には、期間を守っておいた方が“無難”ではあるでしょう。柔軟に対応すればよいと思います。

※契約社員の場合は、「やむを得ない事由」があるときに退職することができるとされています(民法628条)。Q1をご参照ください。

Q3 具体的にどうやって辞めたらいいの??

A  退職届を出しましょう。

退職届を作りましょう。以下のような文面で構いません。

①退職日を決めましょう。有給休暇が残っている場合は、残っている有給の日数を調べて(有給の日数についてはインターネットで調べられます。)、有給を取得する旨も記載するようにしましょう。

②理由は「一身上の都合」で構いません。

③「退職願」ではなく「退職届」にしましょう。「退職願」は、退職を願い出る形になりますので、会社から引き留められる可能性が高まります。退職することを届け出る「退職届」にしておく方が無難でしょう。

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退職届

 この度、一身上の都合により、○○○○年○月○日をもちまして退職いたします。
なお、○○○○年○月○日から退職日までの期間については、有給休暇を取得
いたします。

○○○○年○月○日

 ○○○○ 印

 ○○株式会社

代表取締役 ○○○○ 殿

 

転居命令違反を理由とする解雇を無効とした事例【判例紹介】

2020-02-03

「転居命令」違反を理由とする解雇について、下級審の裁判例を紹介します。

東京地裁平成30年6月8日判決(判例タイムズ1467号185頁)です。

http://www.hanta.co.jp/books/8232/

事例は、被告会社が、原告を東京本社から茨城工場へ配置転換してから1年後に、通勤時間が片道3時間となるということで、茨城工場近くに転居するよう「転居命令」を発したが、原告が従わなかったことから、解雇したという事案です。

東京地裁判決は、「転居命令」についても、転居を伴う転勤命令と同様の判断基準を示し、本件転居命令は業務の必要性を欠き権利濫用であって無効と判断しました。

「被告会社は、原告との個別の合意なくして原告の勤務場所を決定し、勤務先の変更に伴って居住地の変更を命じて労務の提供を求める権限を有する。さらにその権限に基づき、使用者は、配置転換等の業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所や居住地を決定することができる。しかしながら、転居は、一般に労働者の生活環境に少なからず影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権(転居命令権)は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することは許されない。」とし

①業務上の必要性が存在しない場合、②他の不当な動機、目的をもってなされた場合、③労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合の基準を示しました。

本件転居命令について、①原告は片道3時間であるが、配転後1年間、無遅刻無欠勤で通勤している、②原告が長時間通勤や身体的疲労を理由に仕事の軽減や業務の交替を申し出たことがない、③原告の業務は、早朝夜間の勤務の必要なく、緊急時に対応するという必要も考え難い業務である、として、原告が工場の近くに転居しなければ労働契約上の労務の提供ができないとはいえず、業務の必要性がないと判断しました。

「転居命令」が独立で発せられ、争われた事例は見当たらないそうで、裁判所が、転居を伴う転勤命令と同様の判断基準を示したこと、実際の事例に当てはめて判決したことが参考になります。

「名ばかり事業主」問題

2020-01-04

「名ばかり事業主」問題  弁護士 清水亮宏

一昔前、形だけ管理職扱いにして残業代を支払わない「名ばかり管理職」が話題になりました。最近は、実態が労働者であるにもかかわらず個人事業主と扱われる「名ばかり事業主」が話題を集めています。

「名ばかり事業主」という言葉を聞いたことがない方もいらっしゃるかと思います。「名ばかり事業主」というのは、働く時間・場所や仕事の方法などが会社に決められるなど、本来の個人事業主とは異なる様々な拘束を受けており、働き方がまさに「労働者」であるにもかかわらず、会社から、個人事業主(委任や請負など)として扱われる人達のことです。美容師・エステティシャン、システムエンジニア、トラックドライバー、建設業などに多いと言われています。

「名ばかり事業主」は、会社からは個人事業主として扱われているため、労働基準法に定められた労働時間・休日等に関するルール(1日8時間・週40時間の原則、休憩時間の取得、休日、有給休暇など)や、最低賃金法が適用されない扱いとなっています。長時間労働や最低賃金以下の低賃金など、現場の過酷な声も耳にします。労働基準監督署に相談しても、「あなたは労働者ではないから。」と門前払いされてしまうケースも…。

しかし、働く時間や場所などが決められていたり、仕事の具体的な内容を細かく指示されていたり、報酬が時間に応じて支払われるなど、実際の働き方が「労働者」であれば、労働基準法などの労働関係法の適用を受けることができます。会社が名目上個人事業主として扱えば、直ちに労働基準法などの法律が適用されなくなるわけではありません。あくまで働き方の実態で判断するのです。

では、「ちゃんと労働者として扱って欲しい!」「まともな働き方がしたい!」という人はどうすればよいのでしょうか。おすすめは、労働問題の専門家である労働組合や労働問題を扱う弁護士への相談です。専門家のサポートを受けながら会社と交渉することで、雇用化や労働条件改善の道が開けます!

最近では、ヤマハ英語教室の英語講師やウーバーイーツの配達員が労働組合を結成するなど、労働組合を結成して会社と対等に交渉することを目指す動きもあります(ヤマハ英語講師の組合結成には私も関与させていただきました。)。労働組合や弁護士が労働組合結成のサポートすることもできます! お困りの方は、ぜひ関西合同法律事務所にご相談ください。

パート・アルバイトの労働条件格差是正

2020-01-02

パート・アルバイトの労働条件格差是正を勝ちとる    弁護士 河村学

1 なぜ労働条件がこんなに違うのか。

同じ仕事をしているのに、なぜこんなに給料や手当が違うのか?。パート・アルバイトなど非正規社員として働く方々でそういう疑問を持たれる方は多いと思います。確かに変ですよね。同じように自宅から職場に通勤しているのに、正規社員には通勤費を支給するけど、パートには支給しなかったり。また、正規社員と同じように(場合によっては正規社員以上に)働いているのに、パート・アルバイトという名前で採用されただけで、給料が半分にされたり、賞与や退職金が支給されなかったり。使用者が、さしたる根拠もなく、正規と非正規の労働条件に格差を設けているため、パート・アルバイトの多くが低処遇に苦しむ実態があります。

2 立ち上がる労働者

こんな格差をなくそうとパート・アルバイトとして働く方が立ち上がり、各地で裁判が起こされています。名付けて「20条裁判」。労働契約法20条という条文を根拠に、正規社員との、不合理な格差は認められないとして、その差額の支払いを請求するものです。これまでに出た判決では、通勤手当、住宅手当、皆勤手当、休職手当、無事故手当、作業手当、早出残業手当、時間外手当、年末年始手当、夏期冬期休暇、病気休暇などさまざまな手当・休暇について、正規と非正規の格差は不合理として、差額の損害賠償が認められています。最高裁までたたかったある事件では、不合理な格差として認定された手当類を合計すると月額3万円を超える額になりました。

格差是正はこうした手当類にとどまりません。私が担当している事件では、アルバイトに賞与(ボーナス)を支給しないのは違法であると裁判したところ、正規社員の賞与支給率の6割を支給しなければ違法という判決が出されました(現在最高裁に係属中)。また、別の裁判では、退職金についても一定額を出さなければ違法としたり、基本給についてあまりに大きな格差は違法とする判決も出されています。

3 運動があってこその変化

このような変化が起きているのは、格差是正を求める長年の取り組みと、政権交代まで実現した世論の動きがあったからで、決して、現在、安倍内閣が「働き方改革」と称してすすめている施策があるからではありません。むしろ現在の施策は、無期契約社員同士の格差を温存し、また最低賃金の大幅引き上げを拒むなど、安心で公正な働くルールの設定に背を向けています。不合理な格差を是正する取り組みを、労働組合などを通じて旺盛に取り組むことこそが、働きやすい社会をつくる一歩です。

 

整理解雇【判例紹介】

2019-05-30

私立大学の学部廃止を理由とする大学教授らの整理解雇について下級審の裁判例が示されました。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/728/088728_hanrei.pdf

事例は、学校法人が淑徳大学国際コミュニケーション学部の廃止を理由に2017 年3月、同学部の教授であった3人の教員を整理解雇し、解雇された3人が原告として、東京地裁に地位確認・賃金支払を求めて提訴した事件です。

整理解雇が有効であるためには、①人員削減の必要性があること、②解雇回避努力が尽くされたこと、③人選基準とその適用が合理的であること、④解雇手続が相当であることの4つの要件が必要とされています。

本件での判断は、①人員削減の必要性について、国際コミュニケーション学部において定員割れが継続していたことから学部を廃止する必要性はあったものの,被告の学校法人の財務状況が相当良好であったことから,整理解雇をしなければ経営危機に陥ることは想定しがたい。原告の大学教授は,新設された人文学部における一般教養科目や専門科目の相当な部分を担当することができたこともあり人員削減の必要性が高度にあったとはいえない。

②解雇回避努力について、被告の学校法人は,希望退職に応じた場合には退職金に退職時の本棒月額12ヶ月分の加算金を支給することを提案したが,それでは足りない。被告の学校法人の附属機関や他学部に配置転換させて教授を継続させることも可能であったことから,被告は解雇回避努力を尽くしていない。

④解雇手続の相当性について、被告は原告に対して,解雇の必要性や配置転換できない理由を十分に説明したとは言えず,労働組合からの団体交渉の申し入れを拒否していることから解雇手続としては不相当。

結論として、東京地裁は、整理解雇を無効と判断しました。

整理解雇について労働者に有利な判断をした下級審の裁判例です。

 

 

 

 

 

 

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